「地頭」を良くするのがオランダ式?学校が合わないと思った時に知っておくと良いこと
少し前に日経DUALでこちらの記事(「オランダ 学校とは人生の楽しみ方を学び考える場所」)を書かせてもらいました。
この記事、なぜこのタイミングで書こうと思ったかというと、9月の新学期が始まったタイミングで、日本の人から色々と相談を受けたからです。
それらをまとめると「日本の学校だけが全てではない」「日本のやり方だけが正しいわけではない」「世界には多様な教育がある」ということを知らない日本人が多いのではないか? オランダの学校の実情を親が知ることで、少しでも学校生活に苦しんでいる子ども(や親)が楽になるのではないか?と思ったからです。
なので、特に「オランダのやり方が良い」ということを伝えたいのではなく、あくまでも「こういうやり方が世界にはあるんだな」「日本の教育だけがすべでではないよ」ということを知ってもらうためのものでした。
■コーヒータイムで話した「地図」の話
10月後半から秋休みや出張などが続き、約3週間ぶりに通常の生活に戻った先日、長男の学校で朝のコーヒータイムがありました。
この朝のコーヒータイム、保護者が自分の子どものクラスに出向き、自分の子どもから今、学校で何をやっているのか?の話を聴きながら、ちょっとコーヒーを一杯、という会なのです。
日本にはない会なので、ちょっと説明がしづらいのですが…。
で、クラスでまとまって何かをやるわけではなく、自分の子どもの席に親が座って、子どもから学校でやっている勉強の内容や、クラス発表の様子などなどをめいめいに聞くのです。
オランダの小学校は、普通、宿題も一切ないために、学校で使っている教科書などは全て学校に置きっ放し。なので、実際、自分も今回初めて子どもが学校で何をやっているのか?知りました。
と言っても、うちの長男はまだまだこの説明が下手。他の子は、慣れていることもあるのか?スムーズに説明していました。(こういうところから「プレゼン」能力が鍛えられるんだな、とか思いました)
一通りの教材を、ササッとおざなりに説明したあとに長男が持ってきたのは、タブレット。タブレットも一人一台が当たり前のように支給されており、インタラクティブな教材で勉強しているようでした。
しかし、それ以上にこちらの興味を引いたのは地図を使った教材でした。
実際の地図を題材に「AからBに行くには、どういう道が良いのか?」「その理由を教えてください」とか、「ここは工事中で通れません」「ここは渋滞が多い」と言った情報が載っているものもありました。聞いたところでは、これらも生徒同士で一緒に作業したり、答えが必ずしも一つではないので、それぞれの良さを説明しあったり、聞いたりしているようでした。
イエナプランでは、実際の世界や、リアルと言う意味での実学を重視しワールドオリエンテーションと言う、総合学習(理科とか社会とかの区別がない)を中心に、経験すること、発見すること、探究することなどを大事にしていますが、その流れの一貫でやっているようでした。
イエナプランの概念としては、「ワールドオリエンテーション」はもちろん知っていたのですが、こうして実際、子どもが現実にその教えに則って勉強をしているのを知って、とても嬉しくなりました。
もっとも長男が、それを喜んでいるわけではありませんが。
ちなみに、この朝のコーヒータイム。ほぼ全員の子の親が来ており、30分ほどですが、子どもたちとめいめいコーヒーを飲みながら、普段の学校の様子を聞いていました。半分ぐらいの保護者はパパでした。
日本で同じことをやったらどのくらいの親が来るのかな?と思ったりしました。(これは授業参観とは違います)
■地頭がよくなる学習?
で、ここでいきなり冒頭に触れた日経DUALに戻ります。
実は、先の日経DUALの記事を書く際に編集部の人から、「地頭の良さ」というのが、最近、ものすごく引きの強いワードになっているので、何かそれに絡めて書けないか?という相談を受けていたのです。
あいにく、自分自身が地頭も良くなく、(地頭以外も良くないですが)それを良くする勉強法や、学習をオランダでやっているのか分からなかったので、残念ながら編集部のリクエストには応えられなかったのですが…。
ところが、その「地頭」関係で、今非常にバズっているという日経DUALの記事を見てみると、(例えば「親野智可等 子どもの地頭を育てる「知識の杭」)なんと、「楽しく勉強をする“楽勉”が良い!」とか「本物体験が良い!」とか、「地図が良い!」などなどと書いてあり、コレって、まさに今、オランダの学校でやっていることではないか?と気づいたのです。
長男のイエナプランの学校が何よりも子どもたちの「楽しい」を重視しているというのは、まさに冒頭で触れているDUALの記事で書いたことだったのですが、その他、今回の朝のコーヒータイムで知った、地図を使った学習や、本物体験までもが「地頭を良くする学習」として共通している要素だとは夢にも思っていなかったのです。
ということで、ふと普段のオランダ人との仕事をしているときに感じることを思い出したのですが、彼らから感じるのは、ズバリ「地頭の良さ」。仕事の効率が良かったり、合理的で無駄なことが嫌い、税金の徴収の仕方、法律の決め方、内閣の組閣の仕方などなど、ありとあらゆる普段から感じていることってズバリ「地頭が良いからできるんじゃない?」ってことに気づいたのです。
つまりオランダ人って、子どもの頃から「地頭良くなる教育を受けてきた」ってことなのだな、と今更ながらに気づいたわけです。
もちろん、そうでない人も当然いるんですが、全体の傾向としてみるとこれは当てはまるな、と。
ということで、ひょんな流れからオランダ人の教育の本質をみた感じがしたのです。おそらく、これはイエナプランだけの特徴ではないと思います。
で、こうなると尚更、「世界にはいろんな教育がある」というのを知ってもらった方が良いのではないか?という気がしてます。
例えば、ヨーロッパにいると陸続きなこともあり、やっぱり圧倒的に隣の国とかには行きやすいし、その分、普通に情報も入ってきます。こういう環境にいると、隣国やヨーロッパの他の国の教育情報も沢山入ってきます。
日本は島国ということもあり、海外に行くには、文字通り「海」の「外」に行かないとならないので、やっぱりこういう情報の伝達とかもハンデがあるんだな、と感じます。それは例えネットが世界を繋いでいても、です。
「オランダには100人いれば100通りの教育方針がある」と言われています。
教育方針や学校は、何も日本だけではありません。広く海外の情報を探るようにしてみてください。世界には、きっとお子さんに合う方針が見つかるはずです。(なければ、自分で作るのも手ですよね)
今いる学校が合わない、と感じているお子さんや、その保護者の方にこの情報が少しでも役に立つといいなあ、と思っています。これは冗談ではなく。(いつも冗談ではないんですが…汗)
こんにちは。いつも楽しく読ませていただいています。来年、長男が小学校に入学します。この長男がまぁ色々あると言いますか。。長男入学と時を同じくして教育改革が実施予定ということもあり、期待半分不安半分といったところです。そんなこともあり、吉田さんの記事をよくチェックしています。オランダ、何かにつけ日本と対極に位置していて面白いですねー。他の欧州の国や米国とも、異なっている点は多いのでしょうか?確か米国だったと思うのですが、文書に関する教育が日本と全く違う、という話を聞いたことがあります(日本は感情を表現する作文に重きを置くのに対し、その国ではテクニカルライティング的なことを指導するとか?)。オランダの教育で顕著な点、具体的なところで何かありますか?以前の記事にあったように、プレゼンの機会を多く持っていることですか?
(最新の記事を拝読しましたが、私自身が事例を求めがちな日本人代表です汗。しかし、興味がございまして、、)
コメントありがとうございます!!
アメリカや、他の国とは違つところもありますし、同じところもあるかもしれません。オランダの教育は、「100人いれば、100通りの教育がある」と言われており、一括りにするのが難しいところもあります。ただ、ざっくりと大きな違いをいうと、「日本は正解を教えるのが教育」に対して、オランダは「自分の意見を考えるのが教育」となっているように感じます。もしかしたら、他の人とは違うかもしれませんが、自分的にはここに最大の違いがあると思っていて、さらに言うと、これからの時代にはこれが必要ではないか?と思っています。プレゼンなどは、「自分の意見を考える教育」の一つの手法かな、と思います。なので別にプレゼンが多いのが良いとかそう言うことでもないかな、と思ったりもします。何れにせよ、この根本的な違いはかなり大きいと思っています。手法は、その国によっても学校によってもいろいろと違うと思うので、こちらも全部は分からないんですよね。。。
ご回答ありがとうございます。
自分の意見を考えて、それを上手に伝え、さらに行動する、って大人でも難しい。会社員だったら、上司の思いつき発言に振り回されたり汗。
元グーグルの方の著書を今読んでいますが、西欧の資本が入ってきた時にポーランドで起こったこと、を初めて知り、ゾーッとしました。
どんな世の中になっても、子供たちには強くしなやかに人生を楽しんで欲しいと願うばかりです。自身のことは棚に上げ笑