日本も、ただ今、絶賛夏休み中だと思いますが、オランダ(ヨーロッパ)も絶賛夏休み中。近所には、よく見ると、いつもは中が丸見えの家々がカーテンやシャッターを締め切っていて、駐車場もスカスカ。みんなこぞってバケーションに出かけているので、観光客ばかりで街はガラガラです。

日本からだと、夏休みのヨーロッパの街は賑わっているイメージがあるかもしれませんが、それはあくまでも観光地や、観光客の目線であって、地元の人たちはどっかにバケーションなどに出かけており、街の雰囲気はいつもと明らかに違います。

子どもの学校の休みは、だいたい6週間くらいですが、中にはそれに付き添ってガッツリ休みをとる親もいたりして、全体的に仕事も捗りません。そもそも「バケーション取れない人は可哀想」「バケーション取らないなんて!」というモードが街全体に広がっています。(いや、むしろそういう人たちは、存在していないかのような気分かもしれません)

でも実は、こっちの人のバケーションとは、「何もしないことをしに行く」とか、「普段と同じことを、(キャンプなどで)場所を変えてする」という感じです。

なので、必然的に家族と向き合う時間がたっぷりになります。いつにも増して。

 

◾️バケーションとは子どもと一緒にいる時間?

特に小さな子どもがいる家庭では、夏休みは当然子どもと過ごす時間が長くなります。

しかしもともと夏休みではない平常時から、いわゆる学童に子どもを預けることを、あまり好まないオランダ人。

例えば普段はと言うと。週3日、学童に子どもを預けているとすると、「それは結構多いわね」という印象です。一般的には夫婦共働きであっても、だいたい週2日預けるくらいがデフォルトです。これはワークシェアが成り立っており、週3勤務、週4勤務の人も多かったり、時短勤務や在宅勤務が普通に認められているので、「子どもを学童に週2日しか預けない」というようなことができるのです。

で、普段からこんな感じなので、夏休みはもっとガッツリと子どもと過ごす時間が長くなります。

日本人親としては、ついついサマーキャンプや、サマースクール的なものに子どもを預けたくなることもあるかもしれませんが、オランダでは、あんまりガッツリ子どもを預かるようなところはないように思います。例えば、サマーキャンプと言っても、泊りではなく1週間毎日、朝9時に送って迎えが16時とか。(しかも水曜は午前中だけとか)そもそも、純粋に泊まったりするサマースクール、サマーキャンプはあまり盛んではないのかもしれません。(ちゃんと調べてないだけかもしれませんが)

まあ、要は一緒にいる時間がすげー長くなって、それをオランダ人は苦もなく、と言うか、むしろ積極的に子どもと一緒にいる時間を取ろうとしているのがサマーバケーションだ、と言うことです。

 

◾️子どもに良かれと思ってやってること

ここでハーバード大学テクノロジー起業センターの初代フェローでもあったトニー・ワグナー(藤原朝子訳)の『未来のイノベーターはどう育つのか』(2014 英治出版株式会社)の中に、興味深い記述がありますので紹介します。

科学をもっと学びたいと言う理由で、全寮制のエリート校であるフィリップス・エクセター・アカデミーを中退。さらにスタンフォード大学に入学するも、学士号と修士号をとる寸前でまたしても中退し、iPhoneの開発に加わる。その後、アメリカの家電業界に革命を起こすべく、スタートアップ企業で働いているカーク・フェルプスと言う、29歳(本書の執筆時)の青年とその両親の例が出ています。

ここではその両親が、子どもたちのためにありとあらゆる子育て(方法)にチャレンジし、ことごとく失敗してきた経緯が書かれています。例えばカークをエクセターに入れて、その近くに家族で引越しまでしたけれど、結局はカークは(優秀すぎて)退屈だったので退学して、スタンフォードに行ってしまった、とか。(←この例は失敗ではないかもしれませんが、他には失敗が話されている)こうした、今までに両親がしてきた子育てが記述された後、以下のようにコメントしています。

<「多くの親は子供に良かれと思って、『正しい』習い事をやらせ、『最高の』学校に入れる。でも、私に言わせれば、そういう親は子供と過ごす時間の大切さを見落としています。子供が何かを言ったとき耳を傾けてくれる大人が近くにいること、子供が何かを探しているとき気にかけてくれる大人がいることは重要です。私たち夫婦は子供と過ごす時間を犠牲だとは思いませんでした。人間として子供たちがとても興味深いと思ったから一緒に過ごしただけです。多くの人はそこのところを軽視しています。>

続けて、

<子供たちが小さかったとき、私は自分の会社を立ち上げて忙しかったから、よく言われる『短くても質の高い時間を一緒に過ごすことが重要だ』と考えた時期がありました。仕事から帰ったら、子どもと密度の高い45分を過ごせばいいと。でも子供は、まずは親が十分な時間を割いてやらないと質の高い時間を与えてくれません」>

この両親は子どもと一緒に過ごす時間の長さが必要で、その長さがあるからこそ質が高くなると言っていおり、他にもこの両親が「イノベーター」を育てるために、いろいろなことをしてきた経緯が書かれています。

こうした例を見ると、オランダ人がバケーションを始めとして、とにかく家族で長い時間を一緒に過ごしている(ように見える)のは、イノベーターを育てるためには大切なヒントかもしれません。

そういえば、最近、オランダはイノベーション国家として、いろいろな指標で上位にランクされていますが、実はこういう休暇の過ごし方や、子育て、そして生活スタイルが影響しているのかもしれないなあと、思ったりしました。

 

ということで、ただ今、絶賛なが〜いバケーション中で毎日子どもと一緒におり大変ですが(笑)、この本の内容を思い出しながら、オランダ人のバケーションをスタイルを真似ています。

ただ根が貧乏性というか、忙しくないと落ち着かない自分には向いていないようで…。子どもと一緒にいると、ついなんかしないと!と思っちゃんですよね…。意外と、日本人には、こういう人多いんじゃないかな?と思ってますが。

退屈バケーション続行中です。

あ、ちなみに引用した本、オススメです。まだ読まれていない方、ぜひ!