長男がイエナプラン校に転校して、約1ヶ月。多くの人から、「早くイエナプランのことを教えて欲しい」という連絡をもらっていますが、正直、まだその中身を書けるほど、分かっていません。(本で読むのと、実際に行くのとでは大違い)

また、そもそもオランダの小学校全体の中でも約5%ほど、と言われるマイナーな教育方針でもあり、かつ、同じイエナプラン校の中でも学校によっての違いがあるので、はたして、オランダの学校の特徴なのか、イエナプラン校の特徴なのか、はたまたこの学校独自の特徴なのか?なかなか、判断できないという状況です。

この学校は「生徒が学校を楽しむことが一番」というシンプルな方針を大事にしているのですが、今回はいきなりびっくりしたことがありました。

 

■生徒が楽しむためには、柔軟な対応が当たり前

「生徒が一番楽しめる」ために「イエナプラン」という教育方針を採用したかのような学校。生徒と、そして明るく、フレンドリーな典型的なオランダ人先生と保護者の雰囲気だけで、毎日学校に通うのが楽しく感じられるほどです。

イエナプランでありながら、学校独自のプログラムとして体育や美術の時間があり、通常は3学年が一緒のクラスですが、この学校では2学年が一緒。また校長先生がICT教育の研修でシンガポールに1年間留学に行った経験からICT教育を取り入れていたり、担任の先生が2人で、さらに補助の先生が1人とか、細かいところで学校独自の方針がたくさんあるようです。

でも、それもこれも、とにかく「生徒が学校を楽しむことを一番大事にする」という方針から。

そして日本の学校と比べて一番違うなあ、と感じるのは学校の「臨機応変さ」とか、「柔軟さ」とでも言ったところでしょうか。

これらは合理的なことが好きで、理不尽なことや、ムダなことを極端に嫌うオランダ人の性格からかもしれません。

なので、この臨機応変な感じや、柔軟な感じは、オランダの特徴なのか? 学校独自の特徴なのか、イエナプランの特徴なのか?イマイチはっきりしないのです。ただ、どちらにしても驚くほどの柔軟性があります。

ちなみに、これ「決まりがなくていい加減」とか、「ルールを守らなくても全然平気」といった、次元の低いことではありません。

 

■突然の「進級」という臨機応変すぎる対応

で、今回、学校のその柔軟性がいきなり発揮された、とてもびっくりしたことがありました。

長男が学期の途中、新学期始まって1ヶ月で突然クラスが変りました。というか学年が変わりました。つまり、進級したのです。

うちの長男、実は学校は気に入っていたものの、クラスに仲の良い友達ができなくて、少し悩んでいました。というのは、やっぱり語学のハンデを考慮して、グレード4という、日本式にいうと小学校2年生に当たるクラスに入っていました。そして、この学校では2学年が同じクラスなので、グレード3(小学校1年生)とグレード4の子が一緒だったのです。

そもそも、このクラス(学年)に入ったのも、前の語学学校と綿密な連絡をとってくれて、語学の実力的なことを考慮してグレード4になったのです。(親も、その過程は承知済み)

ちなみに、長男は日本で言えば小学校2年生ですから、それは至極順当でした。

(しかし、後で考えれば、そもそも、この「日本で言えば順当」という発想を親がしていること自体、子どもの「個」を見ていなかったなあ、と反省でした。)

実は、長男にとっては少し周りの子達が「幼い」と感じていたようで(本人はそういう認識はなく、ただ「友達ができない」というのみ)一緒に遊べるような子がいなかったようです。その結果、例えば同じクラスにいる子の、お姉ちゃんやお兄ちゃんなど、上のクラスの子、あるいは女の子と遊ぶことが多かったのです。

オランダでは、進級せずにもう1年同じ学年をやり直したりすることも普通。その子の学習進度に合わせて、親と先生と本人が話し合って進級を決めます。ですから、そもそも同じ学年の子が全員同い歳とは限りません。さらにうちの学校は2学年同じクラス、ということで、もうバラバラ。

語学のこともあり、結果的には1年遅らせた学年(といっても、日本式に言うと小学校2年生なので標準なのですが)に入ったことになり、少し友達面では合わなかったようです。

そんなことを感じていた矢先に、先生と、学校を企画運営している会社のディレクターと親の3者面談がありました。この面談、学期はじめに、全員が行うものだと思っていたのですが、(後で分かったのですが)どうも違ったようで、うちの長男だけに面談が行われたようです。

 

■生徒の特性をしっかり見ている先生

面談では、まず長男のテストの結果説明を細かく受けました。入学以来、オランダ語の進捗具合を見るために、細かくテストをしていたようです。ざっくり言うと、テストのスコアが非常に良い、と言うことでした。

そして、「前の学校とも改めて連絡をとった。確かにオランダ語では、まだ多少、今いる該当の学年のレベルに達していない面もあるが、その他はかなり良くできている。場合によっては、上の学年でもトップのものもある。私たちとしては、上の学年に行っても良いと思っているのだが、どう思うか?」と聞かれたのです。

予想もしなかった話でびっくりしましたが、先に挙げたように「同じクラスに友達がまだできていない」「上の学年の子とばかり遊んでいる」、ということがありましたので「ぜひ本人に聞いてみたい」と伝えたところ、実は先生たちも、「同じクラスの友達とあまり馴染んでいない」という状況を良く知っていたのです。

「休み時間に、誰と遊んでいるか?」 「上の学年の誰と仲が良いのか?」「一人で何をしているのか?」などなど、全て詳細に把握しており、ビックリ。先生は、いつも気楽にアッケラカンとしている感じで全然、そんな細かいことを把握している風ではなかったので、尚更びっくりしたのです。

つまり、友達のことも含めての提案だったようで、「テストの成績も良いので、確かにオランダ語は多少苦労するかもしれないけど、もちろん特別なプログラムを作って私たちもバックアップするから、一つ上の学年に行く、という選択肢もあるわよ、どうする?」という提案をしてくれたのです。

親としてのメインの心配は友達のこと。すぐに「上の学年に行くように本人にも話してみる」と言ったところ、「まだ新学期が始まったばかりだから、こういうのは早い方がいい。さっそく来週から変われるようにアレンジする」と。

その後、当の本人も納得し、結果的に突然の進級に。

「上の学年の誰と仲良いから、こっちのクラスがいいわね」とか「誰々と仲良いけど、あの子は来年、またすぐ上のクラスに行っちゃうから、こっちがいいかしら?」など、先生たちが本人のために、ものすごくよく考えてくれていることが伝わって来ました。

そもそも授業形式も個人の習熟度に合わせて個人のペースで進むことが多いので、成績についてはあまり心配はしておらず、むしろ年齢に適した友達ができることが良いかな、と思っていたので、こんな臨機応変な神対応をしてくれた先生や、学校に感謝しかありません。

 

ということで、この臨機応変な対応が、オランダだからなのか? イエナプランだからなのか? この学校だからなのか? ちょっと分からないのですが、少なくとも学年の途中で進級する、というのは日本ではないですよね?

日本では友達が嫌で不登校とかになってしまう子も少なくないので、今回の学校の神対応にはびっくりでした。

先生曰く、「仮に上の学年で1年やって、授業についていけなかったら、もう1年同じ学年をやればいいのだから大丈夫よ」とも。

こうした自由さというか、柔軟性のあるシステムはオランダ的なのですが、こうしたことも偏差値競争にならない教育システムの大事な点だなあ、と感じました。

特別に出来る子、あるいは特別に出来ない子には、それぞれ別の先生が来て教えてくれるらしく、こうしたシステムも、かなり手厚いなあと感じています。つまり、生徒個人のことを、かなりしっかり見ており、それに対して臨機応変な対応が通常からなされているのだと思います。

なにより「子どもが学校を楽しむことを重視している」というのが、如実に現れた出来事でした。

うちの長男、割と後ろ向きな性格なので、今度は突然「前のクラスの子と遊べなくなるのは嫌だなあ…」とか、言い出す始末。学校の神対応のありがたみに気づくのは当分先になりそうです…汗。