8135647742_c15727d701うちは昨年、育休を取ってアジアを家族で放浪してみました。そこで感じたのは、総じてアジアの国では子どもに対して、むちゃくちゃ優しい、ということです。

シンガポールでは赤ちゃんを抱っこして電車に乗ると、120%席を譲ってくれます。飲食店に入れば、ベビーチェアも大半の店にあります。街でも、子どもを連れている人を多く見かけました。

他の国でも、みんな声をかけてくれます。”うちの子は特別かわいいから”、という訳ではないようです。残念ながら。笑。そのくらい、赤ちゃんの居場所が心理的にも物理的にも街の中にありました。

 

■居場所がない日本

ところが、特に子育て中のママやパパは、実感していると思いますが、日本だと、なかなか居場所がないですねよね。街の中に。

バギーを押して電車に乗るな、いや乗ってもいい、という論争があったり、赤ちゃんが飛行機で泣き喚いて迷惑だ、いやしょうがない、とか、親としては、そうした論争になること自体、ちょっと避けたいのではないでしょうか。

そして、なんとなく、赤ちゃんを連れて街に出るのは…という気分になっている人も多いと思います。

しかし、こうした社会で本当にいいのだろうか?ということで、”かいしゃほいくえん”に取り組もうとしている人たちの話を聞いてきました。

 

■”かいしゃほいくえん”とは

この4月から国の制度が変わり、事業所内保育所設置に対して優遇策が取られるようになります。少子化対策、女性登用、待機児童解消などの問題を解決するためです。

具体的には設置と、運営に関しての補助金が多く出るようになるようです。すでに事業所内保育所があるところもありますが、ほぼ企業の持ち出して行われていたようですので、今後、一気に増えるかもしれません。

この”かいしゃほいくえん”の取り組みは、博報堂と、博報堂DY media partners と、 ”まちの保育園”を運営しているナチュラルスマイルジャパンの共同事業です。

子どもが社会の真ん中にいる世の中にしたい、という想いからです。

 

■スタートストロング

まちの保育園の理事、松本さんはこのように言ってました。

世界の教育の潮流は、6歳くらいまでの幼児救育に重点が置かれるようになってきています。

今までの”コンテンツベース”(知識そのもの)の考え方から、”コンピテンシーベース”(知識をいかに使えるか)にシフトしており、答えのない時代、問いを自分で探し、考え、自ら創造し、他者とコミュニケーションを取って協働する、こんな能力が求められるようになっているというのです。

そのためには、幼少期に、夢中になれる場面をいかに用意するか、いかに探究するか、社会参加のレパートリーをいかに多くするか、が重要であり、そうしたことを実現するために、まちの保育園を作った、という話でした。

OECDが提唱しているのが、”スタートストロング”ということなのです。

そして、そのために、イタリア、レッッジョエミリア(という町全体が幼稚園のような街)の理念ややり方を参考にしている、ということでした。

子どもを一人の大人として考え、地域ぐるみで子どもの育ちを応援している街なのです。

 

■地域の資源を活かし、地域の資源になる

まちの保育園は、街の人たちに開かれており、カフェや、ギャラリー、園庭などに街の人が入れるようにしているのです。そして、地域の資源や人を活かし、また逆に、地域の資源になるようにしているということでした。

こうしたビジョンで、事業所内保育所を設計、運営していくというのです。これが”かいしゃほいくえん”です。

もちろん、例えば、満員電車に子どもを乗せて通勤するのか?とか、いろいろな問題はあります。それらは、一つづつ問題を解決していくのでしょう。

 

松本さんが”正しさの中ではなく、豊かさの中で生きる”という文化を作りたい、と言っていました。

特に日本では過度に正しさが求められる気がするので、豊かさの中で生きるというのは、いいなあ、と感じました。自然の多い地方は、実は豊かですもんねえ。

そして自然の中には子どもの居場所があるんですよね。僕が個人的には、田舎の方が子育てがしやすい、と考えている理由がここにあるような気がしました。

”豊かさの中で生きる”、大人もそうありたいものです。

 

【参考】

まちの保育園

かいしゃ保育園プログラム概要案内

Suzi Walker