今回は普段と少し趣を変えて、子どもの話ではなく大人の話を。というか自分自身の話を書いてみます。そう。実体験。というか体験レポートです。

というのは、実は2月からオランダで大学院(みたいなところ)に通い始めました。こちら、Media Lab Amsterdamです。

Media Lab Amsterdamには、オランダ人が全体の3割ほど。残りは文字どおり世界中から学生が集まっています。

20数名が4チームに分かれて、それぞれ違ったプロジェクトに取り組んでいます。実際のプロジェクトを通じて学ぶ、というスタイルで、かなり実業に近いことを行います。自分の場合はクリエイターとして、今まで、そして今、まさに仕事でしているようなことをしています。(仕事に直結するようなプロジェクト)

ちなみに我がチームの課題は、「アムステルダムのゴミ処理をどう効率化するか?」というもの。アムステルダム市との共同プロジェクトです。

チームメンバーは、オランダ人の男子学生が2人。イタリア人女子、スペイン人女子、そして自分。という5人です。

今回は、プロジェクトの内容ではなく参加メンバーについて書いてみます。というのは、まさにこれがオランダでの子育て環境に似ているのでは?と思ったからです。

 

■多様性がもたらす面白さ

例のトランプ大統領の入国禁止令が世界中を騒がせています。オランダでも驚きを持ってニュースが報じられれいますが、例えば、アメリカのシリコンバレーが、なぜこれほどまで発展したかというと、民族の多様性が一つのキーファクターとして語られることが多いですよね。これは、シリコンバレーはもとより、アメリカそのものの発展も多様性が生み出した結果だとも言われています。

それに対して逆行するかのような今回の大統領令。今後、どうなるのか分かりませんが、実はアムステルダムもヨーロッパでは人種のるつぼ、と言われている都市なのです。

そんな都市にある大学院ですから、参加メンバーももちろん多彩です。

上記の自分のチームのメンバー以外には、ロシア、ガテマラ、ブラジル、ニカラグア、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、フィジー、デンマークなど。もちろん、ミックスの人も多いので、もうほとんど国籍は分かりません。

さらにバックグランドも、様々。メディアラボ、というと、日本的にはいわゆるマスコミ的なイメージがあるかもしれませんが、ゲーム、エンジニア、プログラミング、サイエンス、ファッション、美術など、こちらも多様。

唯一、多様性がない、と感じるのは年齢くらいでしょうか。おそらく、ほとんど全員20代だと思われます。ということで、実は自分だけが、おそらくダントツのおっさんだと思うのですが、日本人特有の若く見られる、という特徴から、本人的にはなんとか馴染んでいるつもりでいます。汗。

それ以外は、バラバラで、メンバーの多くはここにきた理由の一つに「世界中から集まってくる学生と一緒にプロジェクトをしたいと思った」ということを話していました。

で、やっぱり、これほどまでにバラバラだと、「空気を読む」とか、「阿吽の呼吸」とか、「言わなくても常識的に通じる」なんてことは皆無です。みんなが言わなくても分かること、何てほとんどないのではないでしょうか。

たとえば、「じゃんけん」をやったことがない人もいたりします。だから、まずは「じゃんけんのルール」から説明しなければなりません。日本だと、「じゃんけんぽん!」で3秒で話がつくところ、ますはルール説明からするので、もちろんかなり時間がかかります。

さらにみんな、とにかく喋るし、主張します。プレゼンも非常に上手です。自分が知らないことや、「知らないことさえ、知らなかったこと」(=「じゃんけんをやったことがない人がいる」とか)がたくさんあることにも気づかされます。

一事が万事、これですが、でも、これが面白いのです。

 

■多様性が大事!と言うけれど…

少し前にも書きましたが(『多国籍の学校だからこそ分かる!? 日本人のアイデンティって何?』)子どものうちから、こうした多様性を経験することは、本人の成長に大きな影響を与えるだろなあ、と身を持って経験しています。

以前にも引用した、ISAKの理事長小林りんさんの『茶色のシマウマ、世界を変える』(ダイヤモンド社 2016)から再び引用してみます。

<単なる知識を詰め込んでも、人はほとんど変わらない。けれど考えることで人は変わる。さまざまな国の子どもたちと一緒に過ごすことで、彼らは自分が何者かを考え始める。>

これは多様性のあるISAKで学ぶ子どもたちの様子を描写したものですが、自分もMedia Lab Amsterdamで、まさにこうしたことを実感するようになりました。

<子どもたちがISKAのサマースクールを評価したのも-(略)-自分の考え方やモノの見方が変わったことに、いちばん良く気づいているのは自身>(だからだろう)

そうなのです。プロジェクト自体は今まで仕事で経験してきたことと同じような感じですが、何よりも、この多様性のあるメンバーと取り組む、というところが非常に刺激的な経験となっているのです。

ちょっとしたことでも「こういう考えもあるのか?」と他のメンバーの考え方に触れるたびに、自分の中の幅が広がるような印象を受けます。

先の本にも

<人生の中で自分が変わることほど、心を揺さぶる経験はない。それは大人でも子どもでも同じことだ。>

とも書かれております。

子育てにおいて「多様性が大事」と言っている意味を、改めて自分で身を持って経験することができたのです。

特に、自分の場合は学生時代をずっと日本で過ごしてきただけあるので、「これまで多様性に触れることが全くなかったんだなあ」と再認識。やっぱり若いうちからこういう環境にいたかった!と思ったのです。

 

ということで、実は20代のイケイケ学生集団に紛れこんでいる40代おっさん1人ですが、仲良くなったオランダ人のゲームプログラミングがバックグランドのギークな学生(日本好き)から、「お前は俺のこと、いくつだと思ってる?」と聞かれ、「う〜ん、30くらい?」と、一緒か、ちょっと下だろうなと思いながらも、若めに言ったつもりが「そう思うだろ?俺、実は21なんだよ」とか、言われてたまげたり、(挙句、そのオランダ人学生にランチをご馳走になったり。汗)イタリア、スペイン、ニカラグアのスーパーラテン女子のノリが、完全に大阪のおばちゃんノリで、ついていけなかったり、アイルランド、オーストラリア女子のネイティブローカルイングリッシュが全く分からなかったりと苦労しつつも、楽しんでおります。

本当に、子どもが小さいうちから多様性に触れさせてあげてください。きっと大きな実りとなって、本人に返ってくるはずです。

ちなみに、Media Lab Amsterdamで得た知見や経験は、何らかのカタチで皆さんフィードバックしていこうと思っていますので。(自分にその能力があればorプロジェクトについていければ)

CollegeDegrees360