例年より少し温かいなあ、と思っていたのも束の間。もうすっかり寒くなってきました。はい。ついに暗くて、寒くて、雨の多い、つら〜い季節の到来です。

特に初めての方には、この時期に北ヨーロッパに来ることはオススメしません。

初めての方、と言えば、我々が移住して初めて知ったのが、”シンタクラウス”。サンタクロースの間違いではありません。”シンタ”です。

一説には、サンタクロースの元になったとも言われています。

シンタクラウスは、スペインからお供のピート(これが元は黒人なのですが、最近は人種差別ということで問題になっています)を連れて船に乗ってやってきます。そして、街中の子どもたちにプレゼントを配って帰って行きます。サラッと簡単に言ってみましたが、これが国をあげての大イベントなのです。

最終日は12月5日。つまりオランダではすでに今、街はクリスマスモード一色ならず”シンタクラウスモード”一色であります。

 

シンタクラウスジャーナル

これ、我々もオランダに移住するまでは全く知りませんでした。また、もしかしたらオランダに住んでいても子どもが現地の学校に通っていないと、なかなかピンとこないかもしれません。

当初はサンタの偽物、と思っていたシンタですが、うちの子どもたちは、もうすっかりシンタに夢中です。シンタクラウスは聖ニコラウスと言って、オランダの子どもたちにとって、一年の中でも最大の行事かもしれません。参照:シンタクラウス

まあ、要は街にやってきて、街中の子どもたちを見て回り各家庭にプレゼントを配って帰ってゆく、というサンタみたいなものです。(と、再びサラッと言ってみましたが)

が、このシンタ行事の盛り上げ方、取り組み方が半端ないのです。街、いや国をあげて、この行事に取り組んでいます。

実は、今年は11/17日にオランダのザ-ンダムという街にスペインから船に乗って到着します。到着する街は毎年違うのですが、この到着までの様子は、毎日”シンタクラウスジャーナル”なる、子どもむけニュース番組がこの時期だけ放送されて、毎日「今日はどこどこにいます」「今日はシンタが船からいなくなってしまいました」「シンタが船の中で発見されました」「シンタを迎える街から中継です!」みたいなレポート番組が流れるのです。

これを学校で見たり家で見たりして、子どもたちは毎日シンタの到着を心待ちにしているのです。

このようにして、日々シンタ情報を発信しているので、子どもたち(特にチビ)はもうシンタに夢中。さらにスペインから到着した暁には、盛大なパレードが行われます。その後、各都市に船に乗ったシンタが現れるのですが、毎年、市長が歓迎会パレードを行い、それがまたTV中継され、街中でピートがお菓子を子どもに配り、、、と大大大盛り上がりなのです。

シンタは11/17日オランダ上陸したのち、2週間ほど滞在し、12月5日にプレゼントをこっそり置いて、スペインに帰って行きます。その間、毎日のように子どもたちは、シンタが乗っているアメリゴという馬の餌である、人参を長靴に入れて寝ます。シンタに自宅での様子を見に来てもらうために、アメリゴの餌を置いておくのです。翌朝アメリゴが来た場合は、その人参がなくなっている代わりに、お礼のお菓子が置かれています。(しかも、そのお菓子が季節の風物詩よろしく、決まったお菓子なのです)

ともあれ、このような2週間をすごすのですが…。ハイ。もちろん、これ、全部親が行います。人参を用意して長靴に入れて、朝早く起きて人参を片づけて、代わりにお菓子を置いて…。場合によって、たまには人参をそのまま残しておきます。「あ〜今日はアメリゴ来なかったねえ!」とか。(え〜、「誰々のウチには昨日きたのに!」と言われたりしたら、うまくごまかしながら。。。)逆に「アメリゴ来たね!」と言って隠した人参をこっそり食べたり…。もちろん、この間も「シンタクラウスジャーナル」は毎日放送されます。

さらに街では、ピートが子どもたちに配るお菓子がたくさん売られていますし、実際、街にはピートがそこら中にいて、お菓子を配っています。

このように、この期間は街のどこに行っても、シンタモード。子どもの学校の教室も、父兄がシンタモードの飾り付けを行うために教室を半日閉鎖したり。

こうやって国をあげて、シンタクラウスを迎えます。で、当たり前ですが、これを一番楽しんでいるのは子どもたち。こうやって子どもたちのために国をあげて、街をあげて、シンタモードになるのです。

そして、最終的には12/5、シンタはたくさんのプレゼントを各家庭に置いて帰っていきます。煙突がなくなった最近では、ドアを「ドンドンドン」とノックした音が聞こえて、急いで外に出てみると、家の前にプレゼントが置いてある、と言うパターンが一般的です。と言うことで、ご近所さんへの協力をお願いしたりするのですが。。。

 

子ども中心の社会とは?

これは子どもが楽しみにしている一年で一番大きい行事なので、特別なのですが、オランダでは基本的に、社会の中で子どもが真ん中に置かれている感じがします。(ちなみに、子ども向けのニュース番組によると、シンタのイベントに賛成、反対、共に50%。少しキリスト教的な要素や、黒人奴隷問題などを感じなくもないのですが。)

例えば、子どもが家の前でサッカーをしていると、ほとんどの人が何かしら話かけたり、サッカーに入って来ようとしたり。少なくとも笑顔で挨拶は交わします。

うちは、ほぼ毎日家の前でサッカーをしたりしているので、近所の人たちは、もうすっかり顔なじみ。周りの子どもも一緒になってやるようになっています。

すると親たちが、辺りに椅子やベンチを持って来て一緒にお茶したり、本を読んだり。(もっとも、これは、さすがにもう寒いので最近はありませんが)

こうした様子から、なんとなく東京の下町を彷彿とさせるような、子どもが常に街にいて、それを大人が見守っているという感じがするのです。

ご存知のようにオランダは「子どもが世界一幸せな国」と言われています。良い学校があるとか、宿題がないとか、教育費が無料とか、オランダ語と英語が話せるようになるとか、多様性があるとかとか、色々とある中で、実はシンプルに「子どもが社会の真ん中にいる」ということが、「子どもが世界一幸せな国」と言われる所以なのではないか?と思ったりします。子どものことを考える余裕のある大人が多い感じもします。

東京だって昔はそうでしたよね? いつからか、ちょっと生きづらい、子育てがしにくい感じになってしまったのか…。(もしかしたら、ごく最近は良くなっているかもしれませんが)

子どもが社会の真ん中にいる感じは、実は大人も非常に居心地が良く楽に生きられる感じがします。

 

ただシンタには問題が色々あってですね。特に子どもを持つ家庭にとっては、まず、シンタからサンタ(クリスマス)という、大忙しなイベントが連続しているのでなんとなく、すでに年末モードになり始めていること。

プレゼントは、シンタからもらうのか? サンタからもらうのか? まさかのダブルか?など、プレゼント誰からもらうのか?問題。(うちの場合は、日本の友達や日本在住のジジババとの兼ね合いもあり、より複雑w)

高学年になると、(もはやシンタは信じていないので)かなり手をかけて作り込むプレゼント用の箱&中身のプレゼントを用意する、大プレゼント交換会などなど。

そしてまたもちろん、黒人ピートの人種差別問題もあります。(このこと自体も、子どもむけニュース番組で取り扱っているのですが)

ということで、絶賛シンタクラウスシーズンのオランダからお届けしましたが、いずれにせよ「子どもが社会の真ん中にいる国」と言うのは、子育てがしやすい国でもあります。少し前に宇多田ヒカルさんが、「イギリスは日本と比べて子育てがしやすい」とTwitterで発言して、バッシングされてましたが。。。実はオランダの子育てのしやすさは、尋常ではありません。ヨーロッパの中でイギリスはひょっとすると、一般的には楽ではないかもしれません。(詳細は下記の関連図書をご参考に)

と言うことで、我が家の次男は絶賛、本気でシンタを信じているので、長男との辻褄合わせと、いかにシンタが本当にいるのか?と言う日々の演出が大変です。さらに言うとサンタとのカニバリ(プレゼント2回問題)をどう整理するのか?が大変ですが。