1週間ほどの日本への出張を終えて、オランダに戻ってきました。東京はちょっと温かいなあと感じていたのですが、その反動か?まあ、オランダの寒いこと寒いこと。今年はオランダも少し温かった気がしていたのですが、すっかりいつもの冬になってました。暗くて、雨が多くて、寒い。。。

つくづく、オランダに初めてくる場合は、絶対に冬はオススメしません。

真冬のおしゃれを楽しむ、とかいうのはあるかもしれませんが。。。ちょっとクリスマス(オランダの場合は、シンタについては前に書いた記事を参照に )モードで、イルミネーションとか蝋燭とかで街が綺麗になっているとかあっても、絶対にオススメしません。

で、そんな寒い冬の最中、出張に行く前ですが日本のTV局の取材がありました。TBSの「世界ふしき発見」という日立プレゼンツの長寿番組です。

 

■イエナプラン原理主義者はいない?

聞けば、「どうも最近のオランダって、チューリップや風車だけじゃなくて、なにやら新しいことがすごい盛んらしい」「どうも新しいものが、どんどん作られたりとか」「しかも、教育も新しい(すごい)らしい」ということを感じとった、制作チームが「アイディア大国オランダ」ということをテーマにロケにやってきた、とか。

「いやいや、今さらですか?」って感じもしましたが、考えてみれば、基本的にこんな小さな国のことは、そもそも注目しませんからね。特に日本みたいな大きな国では。と、納得しつつ、何をテーマにしてるのかな?と話を聞くと、「いろいろなアイディア満載のものを取り上げながら、最終的にはその秘密の源泉は?ということで、オランダの教育に触れたい」とのこと。

「ついては、日本から教育を理由に移住した人を取材したい」ということで、おはちが回ってきたとのことでした。

ということで、自宅で少し話をしたり、学校への送迎シーンや、学校での授業風景をロケしてました。どんな風に映っているのか? どのくらい取り上げられるのか?全くわかりませんが、普段、我々、親も見ることがない学校での様子とかが見れるのかな?と思うとちょっと楽しみです。

と言っても、オランダにいるので見れないんですけどね。

で、ここでうちの学校について、ちょっとだけご紹介します。うちの子どもが通っている学校は、公立のイエナプラン校です。イエナプランについては、もしかしたら日本での方がメジャーかも?というくらい、関心度の高い教育方針です。例えばもうすぐ、長野に日本でも初のイエナプランの学校や、その思想に近い学校ができると聞いています。

でも、実はオランダではイエナプラン自体、そこまでメジャーではありません。オランダでのイエナプラン校は全体の5%と言われており、モンテッソーリ、シュタイナー、ダルトン、果てはフリースクールまで含めて数あるオルタナティブ教育のあくまでも一つ、という位置付けです。

日本では、オランダの教育=「全てがイエナプラン!」=「子どもが世界一幸せ!」みたいな誤解があるかもしれませんが、全くそんなことはありません。(オランダは100人いれば、教育方針も100通りと言われている)さらに誤解が多いのは、イエナプラン理想主義、というか原理主義というか…。イエナプランは「絶対にこれじゃなきゃだめ!」っていう原則も、ほぼ存在してません。(もちろん、雛形はあるけど)というか、そういうのも存在しているけど、常に現在進行形で変化しているというか。理想に向けて現在進行形というか。つまり、「イエナプランはこれ!」っていう型通りというか、原則通りというか、通り一辺倒の決まった形ではあまり存在してません。

さらにさらに、ところどころモンテッソーリが混ざっていたり、シュタイナーが混ざっていたり。これ、逆もそうなんですが、要はみんな、おいしいとこどりで、いろいろ混ざって、その学校独自の教育方法が現在進行形で作られています。

だから、日本でイメージするほど厳密ではないんですね。教育手法が。原則に忠実に則ることより、現実に合わせてより良くしていくのが当たり前っていう、オランダの合理主義的感覚というか。オランダ人にとっては、それが当たり前なので、そんなことも相まって「なんで今さら、日本人はイエナプラン!とかって大騒ぎするの?」みたいな感覚です。

例えばですが、イエナプランの中で「サークル対話」って言って、輪になってお話をするスタイルがあります。このやり方には、いろいろなメリットがあるんですが(その内容は置いておいて)これ、割と普通に他の学校でもやっていたり、それどころか企業とかでも取り入れられたりしてます。

要は学校でも、企業でも「良い!」と思ったら、取り入れるんですね。だから、それが元々がイエナプランだろうが、モンテッソーリだろうが。全く関係ないわけです。と、まあ、全てがこんな感じなんです。

なので、日本で想像しているオランダのイエナプランを、さも理想の学校として思い描いて来たものの、その原理原則にのっとっていないくてガックリ!なんてことを感じる日本からの視察者も多いんですが…。

まあ、モンテの良いとこどりして、シュタイナーの良いとこどりしたオリジナルの教育メソッドのイエナプランも多いです。逆に、「え?これのどこがイエナプラン?」とがっかりする学校も結構あるようです。

でも、これがオランダ流というか、原理原則よりも、臨機応変に子どもの様子を見て合理的に変えていくというスタイルです。

なので、僕もあまり「イエナプラン原理主義者」みたいには思ってなくて、「子どもにとって良ければ、いいんじゃない?」というモードです。で、うちの子どもの学校も、そんな感じが多分にします。今回の放送で、どこまで紹介されるのか分かりませんが、特にイエナプランに興味のある方は、そんな背景を思いながら見てもらえるといいかもしれません。

親の出ごとがかなり多かったり、保護者の繋がりが異様に濃かったり、子どももイベントばかりで勉強してるのか?って感じなんですけどね。

 

■学校が作る地域社会

で、うちの周りのほとんどの子が、この学校(校舎は2つある)に通っているので、そのせいかどうか?は正確には分かりませんが、ほんとコミュニティに余裕がある、というか、ゆとりがあるというか。ともかく子ども真ん中の生活ができ、社会があり、コミュニティであります。

で、あえてこれを誇張して言うなら、オランダはイエナプランが作っているコミュニティと言う感じでしょうか。(もちろん、現実には違うことも多いし、イエナプランはそんなに浸透していないのですが)

で、この余裕は、日本から出張で帰ってくると、強く感じることがあります。

例えば、今回も帰りのオランダの電車で、おばあちゃんが乗ってきました。席は普通に空いてるので、特に譲る必要もありませんが、自分の隣の席には空き缶が置いてあったので、それをどかしてあげました。すると、そのおばあちゃんがそれを見て隣に座りました。ニコっと笑って、「ふ〜今日はラッキーだわ。あなたの隣に座れるんだから」となり、そこから会話が始まります。もっとも、自分のオランダ語レベルが低いので、弾んだ会話は全くできませんが。

その電車から降りる時、今度は前が詰まっています。何かな?と思って見ると子どもを乗せたバギーを押した荷物いっぱいのママを、みんなが手伝っています。ちょっとした段差が電車の乗り降りのところにあるのです。自分も手伝ったんですが、自分の大きなトランクを下ろすのを、今度は別の人が手伝ってくれたんですが、「バギーの方が軽いじゃないw」みたいなことを、言いながら下ろしてくれました。

で、さらに駅についたら、これです。

なんかこういうことが、普通にある社会なのです。

家の周りでも、サッカーやっていたら、おじさんが「ハンド!」とか言ってきたり、以前にも書きましたが、おばあちゃんが「ヨハンクライフになりたいのかい?」とか言ってきたり。最近は、寒いからあんまりないけど、子どもはもちろん、大人もお姉さんも一緒にサッカーに混ざってくるし。

こういう社会って、やっぱり教育が作っているのかな? なんて思っています。

ということで、オランダにいると、なおさら厳密な意味でのイエナプランとかにこだわる必要もあまり感じません。なので、TVで放送されるのが、どんなところを切り取られているのか?分かりませんが、こういう余裕のある社会を作っている根本が感じられるといいのですが。。。

 

出張から帰って来て、寒さを感じると共に、こんな余裕をいつになく感じました。

ちなみに、撮影日に限り先生はお化粧してくるし、子どもたちは、みんなお気に入りを着て来たらしく。全く普段とは違うクラスだったようですが、みんな「日本では有名になっちゃうね!」とノリノリだったよう。そんなオランダ人の様子もお楽しみください。

自分も撮影の時は、どうしてもつい制作サイドのことが気になって、不自然にゆっくり動いたりしてましたが…。ま、どんだけ映っているのか全く分からないんですが。

12/1土曜日21時〜@TBSの「世界ふしぎ発見」のお知らせでした。