dd233321ef0ff80f14fc429f3bd930812013年に10年の歳月をかけて大改修を終えたオランダの国立美術館。ご存知の方も多いと思いますが、ここはレンブラントの「夜警」や、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」など、日本でもおなじみの絵画も展示されるヨーロッパでも、大英博物館、ルーブル美術館と並ぶ、ヨーロッパの偉大な博物館の一つです。

このオランダの国立美術館、建物としても素晴らしいと思うのですが、18歳以下の子どもは、もちろん入場無料です。

オランダにいて、良いなあ、と思うことの一つに、こうした美術館や音楽のコンサート、などなどの本物に、簡単に触れる機会が多いことが挙げられます。

とはいえ、うちの6歳と2歳の二人は、今の所、全くこうしたことに興味を示しません。

今回はそうした環境にいることで思ったことを書いてみます。

 

■本物を学ぶ

レンブラントの「夜警」は、実は昼のシーンを描いていたとか、「夜警」というタイトルは、のちにニスで真っ黒に変色し、埃まみれだった(昼のシーンの)絵を見て勘違いして名前をつけてしまったものだったとか、もともとは、もっと大きくて展示スペースに合わせて切られてしまったものだったとか、レンブラント自身のポートレートが混ざっている、とかとか。

あの画の背景には、なかなか面白い話があります。

さらに、そもそも昼の明るい光に照らされた状態の人物を描くのが一般的だった時代、光と影の中に、人を描いたことなどが、当時はありえなかったことだったらしく、(だからこそ、躍動感のあるドラマチックなシーンになった)レンブラント自身、おそらく相当な異端児、誰もやらなかったことを初めてやった人だったからこそ、後世に名前を残したのかな?と考えさせられたりします。

で、こうしたことは、やっぱり本物を見ることによって、話を聞いたり、興味を持ったり、感じたり、考えたりするものだと思うのです。

ここで、リヒテルズ直子さんと尾木ママの対談本『いま「開国」の時、ニッポンの教育』(2009年 ほんの木)は、オランダと日本の教育の違いに関して書かれているのですが、そこから、リヒテルズさんの言葉を拾ってみます。

<ホンモノに近づいていくとなぜいいかというと、それがある場だとか状況だとか周りの様子が見えてきますよね。コンテキスト(文脈的な背景)が見えてくるんです。そういうものに刺激されて、たくさん「知りたい」「なぜ」という動機付けが出てきて、観察力や洞察力も養われる。コンテストの理解は、歴史教育や時事を学ぶには特に大切です。>

自分は、まさにこれでした。

 

■興味を突き詰める

我々は国立博物館に行ってから、後日「レンブラントハウス」という、当時、レンブラントが住んでいた家(がまだ残っており)が今は美術館になっている場所へ、出かけてみました。

そこでは、当時の間取りのまま残された家に、アトリエからキッチン、ベッドまで全てが忠実に再現されており、さらにアトリエでは絵を描く際に使う顔料の作り方を実演していました。

考えてみれば、当たり前なのですが、当時は今の絵具なんてありませんから、石や鉱物を削ったりして、色を作ることから始めないと、絵が描けません。IMG_9506

どの鉱物が何色なのか? どの色とどの色を混ぜると、好きな色が作れるのか? どの鉱物が高いのか? どの油を混ぜると、いい顔料になるのか? それを保存するにはどうするのか? などなど、絵を描く前に大変な作業があるのです。そんな作業をした上で、ああした絵が描かれているわけですが、それらもやはり本物を見せてもらい、話を聞いて、実演しているのを見て、初めて理解することができました。

ちなみに、6歳は話の途中で飽きだし、2歳は爆睡してましたが。

本書の中で、リヒテルズさんはこうも言っています。

<子どもたちにできるだけ実物に接近させろということですよね。実物というのは、子どもにとってエキサイティングなものだし、そうして初めて子どもたちは「何のために学ぶのか」を考えるようになるんだと思いますね。また、日頃よく見ている身近なものごとに対して「どうして?」とか「なんのために?」とか意味を考えたり、再発見したりするようにもなるでしょう。>

このようにホンモノに触れられる環境、さらに、そこでもった疑問や興味を突き詰められる環境が豊富にある、というのがオランダに来て実感したことでもありました。

 

尾木ママはこれらを受けて、本書の中で

<もっと深く解明したいという興味・関心にも火がつき、学ぶ面白さ、「学力」の価値だって実感できるんじゃないでしょうか。>

と言っています。

今回はたまたまレンブラントを通して、オランダは社会全体として、こうした本物に触れる機会に溢れているな、と思ったのですが、こうしたこと、もちろん日本でだってできますよね。夏休み中は、親がちょっと工夫してやってみるチャンスかもしれません。

本物に学ぶ、触れる、見る。こうしたこと、子どものうちから沢山しておくとやっぱり良いのではないか?と再認識した次第です。

もっとも、うちの2歳と6歳は、今回の本物体験は、とりあえず完全にスルーしていましたが……。