オランダではサマーバケーションに入るまで、もうひと頑張り、という時期ですが、日本では卒業式シーズンですね。長男の通っている日本語の補習校でも、修了式、卒業式が行われました。

うちは、昨年、長男の幼稚園卒園を期に、オランダへ移住しましたので、ちょうど1年になろうとしています。会社を辞めて起業、そして移住ということで、あまりにも環境も変わりましたので、とても1年前に来たとは思えないのですが、時間経過的には、本当にあっという間だったなあと感じています。

さて、そんな色々な思い出が交錯する卒業シーズンですが、今年、とっても感動、というか考えさせられたのが「自由の森学園高等学校」の校長先生の言葉です。

話題になっていたので、皆さんもご存知かもしれませんが、ちょっと引用してみます。

 

■「価値」ではなく「尊厳」

<私は昨年の夏からずっと「 生命( いのち )の重さ 」について考え続けていました。
昨年の7月に起こった相模原の事件、何の罪もない無抵抗の障害者の方々19名が犠牲になり、また多くの方々が深い傷を負い、そしてまた、私たちの社会に大きな衝撃を与えました。
みなさんの中にも、この報道に接してどのように考えていったらいいのか立ちつくしていた人もいたかもしれません。
私もその一人でした。
9月の全校集会では、この事件について共に考えていこうといった呼びかけが教員の中からありました。

この事件の根底には様々な考え方が複雑に絡み合っていると言われています。
その一つとして「 優生思想 」があげられています。

「 価値がある人間・ない人間 」「 役に立つ人間・立たない人間 」「 優秀な人間・そうでない人間 」

といった偏った考え方で人間をとらえ、人間の生命に優劣をつける思想です。
また、この事件は「 ヘイトクライム 」( 憎悪犯罪 )の特質も持っていると言われています。
ヘイトクライムとは、人種・民族・宗教や障害などの特定の属性を持つ個人や集団に対する偏見や差別にもとづく
「 憎悪 」によって引き起こされる暴力等の犯罪行為を指す言葉です。>

記憶に残っている人も多いと思いますが、この事件は、ヨーロッパでもある種、テロと同じような(もしかしたらそれ以上の)衝撃を持って伝えられました。

この事件については、自分も、この校長先生と同じように、いまだにどうしたら良いか分からず、まさに立ちつくしているうちの一人でもあります。

また、この校長先生の言葉にあるように、「価値がある人間と、そうでない人間」、つまり「優秀で、役に立つ人間」には、周りからの大きな期待や希望、そして時にそれが本人にはプレッシャーになって重くのしかかったりするものの、日本の社会全体が、こうした「優秀で役に立つ」ことだけを子ども(&大人にも)に過剰に求めている気がします。

 

■日本の教育との違いはここにある?

校長先生の話は、全盲と全ろうの重複障害を持つ 福島 智( さとし )さん( 東京大学先端科学技術研究センター教授 )の話を挟み、次のように続きます。

<人間の価値、生命の価値、生きる価値、そもそも人間や生命という言葉に「 価値 」という言葉をつなげるべきではない、
私はそう思っています。人間には、そして生命には「 尊厳 」があるのです。
尊厳とは「 どんなものによっても代えることができないもの・存在 」と言うことができるでしょう。
ここにいるみなさん一人ひとりもそうです。

あなたは何ものにも代えられないのです。あなたの代わりはどこにもいないのです。

人間をそして生命をも、取り替えることが可能なものとして「 価値的 」に見てしまう現代社会において、「 価値 」ではなく「 尊厳 」という言葉で自分をそして自分の人生を見つめていくことが大切だと私は思っています。
当然その視線は、自分以外の他者やその人生をも見つめることにもなるでしょう。
そしてそれは「 どのような社会を目指していくのか 」ということにもつながっていくと私は思っています。>

この話を聞いて直感したのは、オランダ(やスカンジナビア)では、個人の「尊厳」が徹底的に大事にされ、それを自分自身で育んでいくこと、これこそが教育と捉えられているのではないか?と思いました。

決して個人の「価値」を高めることだけをしているのではない、と感じるのです。

これが、実は世界の幸福度ランキングにも表れているのではないか?と思いました。最新の幸福度ランキングによるとオランダは6位、上位はスカンジナビアンが独占。日本は51位でした。ー2017世界の幸福度ランキング

 

■このままでは「使える人間」にさえならない?

さて、その一方であのホリエモンが、小中学校の教育に関して、「今の教育を続けていると10年後、使い物にならない人材になる」とも言っています。

自由の森学園の校長先生は、価値を高めて「使える人間」になることを目指している今の教育ではダメ、と言っており、ホリエモンは、今の教育ではその「使える人間」にもならないと言っているのです。

こうしたことを皆さんも漠然と感じており、今の教育に対して、不満や不安が広がっているのかな?と思いました。本当に難しいですよね。。。

 

ただ幸い?にも、今は、こうしたことを感じている人たちが、全国各地で色々なアクションを起こしているようにも思います。実際、いろいろな相談を受けますが、皆さん、すばらしいアクションをされています。

こうした個々のアクションが、どんどん繋がって大きなムーブメントになるといいなあ、と感じていますし、そのために少しでも出来ることがあれば、やっていきたいと思っています。

ということで、今回はいつになく少し真面目な話になってしまいました。(いつも真面目ですが。)でも自由の森学園は、高校の卒業式でこんな話が聞けるとは、やっぱりすごいなあ。。。(全文はこちらー『自由の森日記』

Neeta Lind