オランダではありえない!? 入学式や入社式が「一斉」であるのは良いことなのか?
今年は入学式のタイミングで桜がちょうど咲く頃でしょうか。日本では、毎年このシーズンになると、新入生、そして新人の真新しいスーツ姿が街に溢れますね。それを見て、皆さんも自分の新人の頃のことや、自分の子どもの入学式や入園式を思い出すでしょう。
今は、まさにこうした微笑ましいシーズンですが、これ、世界的に見ても日本独自の慣習かもしれません。いや、他の国で一斉に新シーズンが始まることももちろんありますが、少なくともオランダでは小学生の入学シーズンというのはないし、社会人が一斉にリクルートスーツに身を包み、入社式に臨む、ということはありません。
この「一斉」ということが、日本独自の文化な気がして、面白いなあと思いました。
■小学校の入学は4歳になった翌月から
日本にいると、入学式や入社式は、「一斉」に行われるのが当たり前、という認識だと思います。最近でこそ、海外のタイミングに合わせた「9月入学」、という制度が一部であると思いますが、それでもそれはまだ一部。日本では桜のシーズンに合わせた4月が「一斉」スタートのタイミングですよね。
でも、海外においては、ここまでしっかりとしたスタートシーズンはないように感じます。いや、もちろん、サッカーリーグのスタートや、学校のスタートシーズン(新学期)はあります。一般的には9月前後でしょうか。でも、たとえば、小学校入学に関して全員が同じ学年で、同じタイミングで始まる、というのはないような気がします。
例えば、オランダでは子どもが4歳になった月の翌月から、順次、小学校に入学します。なので、一斉に揃った入学式はありません。
それどころか、毎年の進級も、必ずしも年齢が上がると自動的に進級するわけではなく、先生が本人や親などと相談しながら、進級を決めていきます。
「今年は進級を見合わせる」(=もう一年同じ学年をやる)という判断も、それほど珍しいわけではなく、まあ「そういうのもあるよね」と、受け入れられています。
逆に、ある科目だけ「上」の学年の内容をやる、ということもあります。例えば、うちの子どもは算数が好きなようで、「今やっているのがつまらない」というので、先生に相談したら、上の学年の内容をやらせてもらえるようになりました。(おそらく普通の日本の子どもにとっては簡単すぎるので)
このように小学校時代から、年齢とかが同じで、みんなで一斉に同じことをやる、ということがあまりありません。
■とにかく「一斉」がない
そこで考えてみると、うちが移住した理由もいわゆる日本式の「一斉教育」ではなく、「オルタナティブ教育」が、合っているのではないか?ということだったし、教育システムも、先に書いたようにそもそも年齢が違う子が同じ学年にいたり、異年齢が同じクラスだったり(これはイエナプランの特徴の一つ)、小学校においては入学タイミングもバラバラだったりと、とにかく「一斉」があまりありません。
さらにみんなで一斉に競技するような運動会もなければ、もちろん2分1成人式もありません。卒業試験や、先の進路を決めるのに重要になってくるような試験はありますが、いわゆるみんなで一斉にやる「入試」もないのです。
こうしたことも、多様性の一つの現れかな?と思います。
■年齢の固定化は、考え方の多様性も削ぐ?
自分が浪人&留年をしているために、社会人になったのは一般的には2年遅れだったのですが、会社によっては、2年遅れや3年遅れでは、「新卒では就職できません」と言われていました。新卒一斉入社もない海外では、こうしたこともないと思いますので、年齢の多様性もあるように感じます。
実際、今、自分が通っている大学院でも、多くは20代だと思いますが、自分的には結構、馴染んでいるつもりです。少なくとも、日本の20代の中にいるほどの違和感は感じていません。
こうしてみると、海外では学校内での年齢の多様性もあるかのように感じます。(そもそもあまり年齢を気にしない?)
近頃、話題の『LIFE SHIFT』(東洋経済新報 2016)には、寿命が延びることによって、今までの「教育」「仕事」「引退」という3ステージのライフスタイルが成り立たなくなってくる、と書かれており、仕事の間にサバティカルイヤーをとったり、学生に戻ったりと、4ステージ、5ステージの人生設計がないと100歳まで生きられない。さらに、他の世代と交わることも非常に重要になってくると書かれています。
今、新卒で19年間働いて、退職し、海外移住して、さらに学生になるということで、共感するところが多いのですが、そもそも海外での学生生活を送ると、そうしたこと(=LIFE SHIFT的な多ステージ生活)がやりやすい(日本と比較すると)と感じています。
日本の4月に桜が咲いて、一斉に新しいシーズンが始まる感じも好きなんですが、世界にはいろんな制度やシステムがあることを知っているだけでも、捉え方が変わって良いかもしれませんよね。
学生時代を海外で送っていたら、浪人や留年なんか全く気にしなかっただろうなあ…と強く思います。ってか、もともと気にしてないんですが。。。小学校の留年とかも、全然アリですからね。オランダでは。
ま、もちろん、このせいだけではないと思いますが、なんか子どもが「ノビノビ」しているのは強く感じますね。。。「ノビノビ」というか、「人のことを気にしない」というか。。。良くも悪くも。
吉田様
初めてコメントさせていただきます。オランダ在住の松木理恵と申します。いつもブログを興味深く拝読しています。
私は2014.09にオランダに移住しました。今は5ヶ月になる息子がいます。息子が出来たことで教育に感心が高まり、オランダの何が世界で一番幸せな子供を作り出す秘訣なのか、今後息子にどんな環境を準備できるか、自分なりに勉強を始めているところです。
以下二点について、是非吉田様の考えを聞かせて頂きたく、連絡させて頂きました。宜しければご連絡頂けると幸甚です。
一つ目は、日本語の教育についてはどのようにお考えですか?バイリンガル教育についてご意見伺いたく。
もう一つは、日本人の多くが持つアイデンティティーというか、特性についてお子さんにはどのような事を期待されていますか?私が海外に出たのは社会人になってからで教育は全て日本で受けました。ビジネスの場でも自己のアイデンティティーを持つことが重要と考えています。勤勉さ、丁寧さ、相手を尊敬する所等は、世界でも日本人として誇れる所ではと思っています。これは日本で受けた教育が影響する所も大きいのではと思っており、そういう良い部分は息子にも是非身につけて欲しいなと思っています。オランダでの教育がメインになるにつれて、どのように日本を知って興味を持ち、自己形成にプラスにできるのか、ご意見をお聞かせ頂ければと思います。
突然の連絡で失礼致しましたが、是非宜しくお願い致します。
松木理恵