9月の入学当初はなかなか友達ができなかったり、言葉の理解度が同い歳レベルに追いついていなかったりで、そもそも授業にもあまりついていけてなかった長男ですが、半年くらい経って、なんとかかんとか学校にもすっかり慣れ、友達も出来て、そしてオランダ語も少しづつ追いついてきました。

学校の授業(プロジェクト)はなかなか面白いようで、いわゆる授業はオランダ語と、算数と、英語のみ。あとは日本的に言うと総合学習っぽいものがあるだけです。(それもいくつかの種類がありますが)

この辺りは、いわゆるイエナプランの特徴でもありますが、聞いてみると、やっぱり日本の学校とは違い、なかなかにユニークなものが多いようです。

 

■自己紹介は自己プレゼン

例えば、先日は「自己紹介」をやりました。

これは可能なら(と言うか、ほとんど全員がそうするようですが)スライドを使って、自分の生い立ちから、家族や兄弟、好きな食べ物、好きなこと、習い事などなどを紹介するもの。

まあ「自己紹介」自体は、日本でもそこまで特別なことではないかと思います。むしろ新学期などには、普通にやりますよね。ただ、こちらでの「自己紹介」は、やり方がちょっとユニーク。簡単に言えば「自分のプレゼン」をするのです。

子どもたちは、予め各自、発表日が決められているのですが、その決められた日まで各々自由に準備をするのです。

当然、日本的に言うと、まだ2年生の長男ですから、自分でスライドなどを準備できるはずがありません。そこで各家庭の親と同様に、自分がせっせとスライド準備のお手伝いをすることになります。

いわゆる「プレゼン準備」と言うやつです。

我が家的には、このあたりは完全に父親である自分の役割。普段から仕事でプレゼンばかりしているので当たり前なのですが。

そこで今回は「自己紹介を通して、どんな自分をアピールしたいか?」と言うゴール設定決めからスタートしてみました。

長男曰く「面白い人と思われたい!」とのこと。ならば、簡単。徹頭徹尾「おもしろ推し」でいこう、と言うことで、内容はもちろん、スライドに使う写真選びから、話す内容などなど全部を「面白いかどうか?」というチェック基準で作りました。

長男にとっては、いわば初めての「プレゼン」。しかも周りは全員オランダ人のため、かなり注目されている(シャイなので、まだ馴染めていないこともあり)などのアウェー状態を想定し、「日本といえば侍や忍者ばかりだと思ってるでしょ? 実は今の日本は超近代的なのでポケモンしかいないんだよ」と言いながら、忍者と侍とポケモンの写真を見せたり、今こちらで寿司が大人気なのですが、美味しそうな寿司の握りが綺麗に並んでいる写真を見せて、「もちろん僕が好きなのは、このお寿司です」「ほんとに好きなのは、この玉子のお寿司だけだけどね」みたいな、子どもにはウケる(実際ウケたらしい。汗)日本紹介をちょいちょい入れながら、なんとか大好評のうちに終えたのです。

しかもユニークなのはプレゼン後、質疑応答の前に「このプレゼンに関するクイズ」をプレゼンテーター自らが、みんなに向かってするのです。「日本には侍と忍者は今もいますか?」「僕が好きなお寿司のネタは何でしょう?」とか「僕は中国からきました。マルかバツか?」とか。(この質問も、「面白いオレ」をアピールするための大事な要素w)

これが授業の一環でやる「自己紹介プレゼン」です。

人前で自分のことをきちんと説明するという初めての経験自体、長男にとってプラス。準備にPCを使って資料を作った経験もプラス。準備をして発表すると言う一連の作業工程を知ったのもプラス。もちろん、ちゃんと自分のことをみんなに理解してもらえる、ということもプラス。

 

■子どもは元来、知的探究心が旺盛

で、こんな「自己紹介プレゼン」をしたかと思うと、日本的に言う「夏休みの自由研究の発表」みたいなものや「自分の好きな食べ物についての発表」(例えば、チョコレートなら、どこで取れているのか? 作られるのか? カカオがどんな環境で収穫されているのか? フェアトレードってなんのか?とか)などが、続きます。

また、グループの作業として、各月ごとに設定されているテーマ(建築、水、環境とか)に沿ったプロジェクト発表や研究、作品作りなどがあるようです。

で、こうしたことは、まあほんの一例なんですが、端から見ているとかなり楽しそうで「羨ましいなあ」というものばかり。実際に長男が「学校の勉強がつまらない」と言ったことは、今までに一度もありません。

いわゆる、みんなが一斉に黒板に向かって板書して教科書を覚える、という我々親世代がずーっとやってきた授業(今の日本も同じかな?)というのが皆無なのです。

ここで、イギリスBBCのコメンテイターでもあるイアン・レズリーさんの『子どもは40000回質問する』(2016 光文社)から、引用します。

<欧米の教育システムは、すでに存在しない難題に対処するために作られたもの-(略)-欧米の学校は帝国を管理する有能な役人を養成するにはうってつけだが、好奇心旺盛な学習者を育むには向いていない。>

これはインドのスラム街にPCを設置して子どもたちに自由に使わせる、という実験を通して、子どもたちの好奇心や知的探求力の旺盛さを目の当たりにした経験を持つ、現在、ニューカッスル大学の教育工学教授のミトラさんの話です。(参考:TED 「子どもの自己学習について」/スガタ・ミトラ

つまり、子どもたちの知的探求力の旺盛さに合わせた学習こそが、今の時代にはもっとも必要とされている、ということを言っており、子どもたちの知的探求力は、元来、非常に高く、今の学校システムはむしろ、それを阻害する方向に向かっている、というのです。

まして時代の変化が激しい今「すでに存在しない難題」に対処するための勉強は、全く必要のないものかもしれません。

前回の記事(「未来への準備できてる!?「知っておけばよかった」とならないために必要なたった1つのこと」)でも書きましたが、我々、親世代は「時代が変わっている」という認識を強くもつ必要があるかもしれません。

 

ということで、黙っていてもみんなが出世して、年功序列で順々に偉くなって給料が上がっていった、日本社会全体が上りエスカレーターのように進んで行った時代ではないんですよね。今はもう。

少子高齢化が進んでいる今は、悲しいかな下りエスカレーターに乗っているかもしれない時代なのです。となると、上りエスカレーターに乗っていた時と同じことをしていたのでは、絶対にダメですね。下手したら、上ってるつもりで下がってるかもしれないのですから。

今、中国やインド、東南アジアの一部は、超ハイスピードな上りエスカレーターです。

そう考えると「自己紹介プレゼンスキル」なんていうのは、下りエスカレターでは絶対に必要なスキルですよね。黙っていたら下っちゃうんで。しっかり上にいけるアピールをしないと始まりませんから。なので、子どものうちから、こうした知的好奇心を伸ばせる環境に置いてさえおけば、どんな逆境でもスルスルっと上っていくんではないか?と思っております。

残念ながら…親は分かりません。。。汗。