ここ1ヶ月ほど、日本とオランダを行ったり来たりしてます。同じ年末、同じクリスマスシーズンでも、子育てを通して見える世界は少し違うようです。

日本はやはりこの時期、大忙し。まさに師走ですね。

子育ての視点で見ると、日本ではこの時期クリスマスシーズンではありながら、お受験シーズン。中学受験、年明けの高校受験、大学受験と続く追い込みの時期でもあります。年末年始で親の方も、何かとせわしなく、インフルにならないようになど色々な気遣いをしながら、ますます寒くなってくるシーズン。なんとなく、心も落ち着かないシーズンではないでしょうか?

一方のオランダは、ちょっとゆっくり、というかのんびり。もちろん年末やクリスマスに向けて、学校でもクリスマスディナーパーティーがあったり、先の記事でも書いたシンタクラウス から、サンタクロースへ向けて、各所でツリーを飾ったり、まあ忙しいと言えば忙しいのですが、その忙しさが、少し日本とは違うようです。家族でゆっくりバケーションを過ごすための、楽しい忙しさという感じでしょうか。

 

学校対抗サッカーのセレクションメンバーになった

さて、この時期オランダでは、各学校を代表するサッカー選手の選抜メンバーセレクションが行われます。(もっとも全学校参加している訳ではないし、こういう選抜がない学校や、時期が違う学校もあります)

オランダでは、いわゆる学校の部活ありません。なので、子どもたちはそれぞれやりたいスポーツがあれば、どこかのクラブに所属してそこで行います。部活という学校での課外活動はないのです。

うちの子どもが通っている学校は、校長先生が大のサッカーファン(Ajaxファン)ということもあり、オランダ全土で行われる学校対抗のサッカー大会に校長先生の肝入で参加しています。

(校長先生とか、うちの学校の様子を見たい人は、こちら31:00過ぎから(世界ふしぎ発見2018/12/1 放送)どうぞ。)

で、その大会は来年の5月とかに行われるのですが、そこに向けて今から学校独自に準備を始めます。というか、学校代表の選抜メンバーをセレクションするのです。何週かに渡って、希望者が練習試合などを行い、それを通してメンバーがセレクションされていきます。

まあ忙しい年末とは言え、こんな感じなので、日本の受験シーズンとは全く違う空気が流れています。

で、うちの長男が、なんとかそのセレクションの、しかもトップチームに入ることが出来たのです。

たぶん、実力的には昨年から、トップチームではないにしても、セレクションには入れたと思うのですが、長男は自分に自身がなかったので、昨年はエントリーさえしませんでした。今年は、親がかなり積極的に「チャレンジしたら?」と誘い、仲の良い友達もみんなやることが分かり、(しかも、みんなが意外と上手くないことが分かった上で←これがポイントw)ようやくチャレンジ。そして、めでたく学校の代表メンバーに選ばれました。

確かに、日本から来て、オランダ語もままならないで、(おまけに日本語もままならない上に)サッカークラブでも、あんまり上手くないチームにいて(昨年クラブ内の選抜メンバーの試験に落ちている)オランダのこともあまり分かっていないし、まして、サッカー大国オランダですから、自信がないのも分からないではないですが、昨年まではチャレンジさえもしないというチキンっぷり。

それが、なんと今年は代表メンバーに選ばれたのです。実際、公平な目で見ても、割と実力をつけて来ており、まあ結果的には満を持して挑戦して選ばれた、という形ではあります。

そして、ここで選ばれたことで、彼の全てが変わるのではないか?という超希望的観測を持っています。というのは、いろいろなことに(やっと)自信を持つことができるようになると思うからです。

別にサッカーの選手になれるのか?とか、その大会で優勝できるのか?ということは全く問題ではなく、選ばれたことで、自分に対して自信を持てるようになったことが非常に大きいと思うのです。要はこれは、彼の人生の中で、初めて自信を持つことが出来る出来事だったのです。

はなまるの高濱先生も著書の中で、「小学生のうちに、何か1つ、これだけは人に負けないということを作りなさい。小学生はこれだけでOK」と言われていますが、まさに今回のことはこれに当たることだと思ったのです。

 

「教えない」オランダ式

実は、オランダのサッカー(に限らずかもしれませんが。。。)は、ほとんど教えません。それに対して日本は、小さいうちからかなりテクニックを丁寧に教えると思いますが、それと比べると全くと言っていいほど教えません。

これには最初、びっくりしました。「教えない」ということに対しても、びっくりしたのですが、なんで「教えない」サッカーで、国として見るとこんなに強いのか?ということに対してです。

かの河合隼雄先生は、『子どもと学校』(1992年 岩波新書)の中で、

<子どもが育つのを本当に「見守る」何んやかやと「教える」(結局は干渉していることなのだが)よりも、よほどエネルギーのいるものである。>

と書かれています。

つまり、手取り足取り「教える」方が簡単で、じっくりと子ども自らの成長を待つ、ということの方がよっぽどエネルギーが必要だ、というのです。

その中から本当に上手くなりたい子は自分で考えて、工夫して、自分で「育つ」力を発揮して伸びてくると言うのですが、オランダのサッカーを見ていると本当にその通りだと感じます。

また、今回の長男の選抜メンバー入りも、足掛け2年以上と、かなり長いこと時間はかかりましたが、ようやっと自分で実力を伸ばした結果です。なので、ここで自分に対して自信を持ってもらえると良いかと。ちょっと大げさにいうと、もう子育てが大方終わった、というようなことさえ感じていますw。

つまり、自分は子育てとは、「子どもに自信をつけさせること」だと思っているからです。大人になるとは、「自分に自信を持つこと」だと。

もちろん、今後、ちょっと自信を持ったものの挫折したり、落ち込んだりすることも当然あると思いますが、そういう経験をしながら、謙虚な自信を持ってもらえれば、と思っています。それはサッカーでなくても全然良いのですが。。。

河合先生は『大人になることのむずかしさ』(2014 岩波書店)の中では、現在は「大人」のモデルがないので、大人になることが非常に難しい時代だ、と書かれており、

<大人になるという決められた目標があり、そこに到達するというよりは、自分なりの道をまさぐって苦闘する過程そのものが、大人になることなのである。>

とも書かれています。

こういうことを考えていくと、お受験エリート代表である大臣が書類を偽装したり、嘘をついたり、セクハラしたり、大企業での不祥事などが相次いでいる昨今、ますます、大人のモデルが見えにくいなあと思います。まさか、大臣も大人になる過程で苦闘していたのでしょうか??

 

お受験の先に、どういう大人にするのか? というより、子ども自らがどういう大人になっていくのか?大人は、じっくりと見守る覚悟が必要になりそうです。

こうやって考えると、オランダの大人は子どもを見守っている感じがします。お受験もないし(もっとも、中等教育に行くときには、結構大事なテストがあるけど)失敗を許す風土や、子どもを見守る風土があることが生活のしやすさにも繋がっている気がします。なので、日本ほど忙しく感じ内のかな、とか。

ということで、弟にしか強気に出ない長男が、サッカーの学校代表メンバーになったことをきっかけに自信を持つことができるのか?ハラハラドキドキしながら見守って行きたいと思います。

ちなみに、自分も子どもの頃は(も)スポーツしか出来ませんでしたが、それで結構自信を持てた気がします。単純に足が早いだけでモテる、ってやつですね。

今では、見る影もありませんが。。。はい。(自分から言っておきます)