子どもに自信を持たせるには?イエナプランの学芸会の意外な効果
ちょうど今は日本だと受験シーズンですね。センター試験も大きく変わろうとしていますが、最近しばらくの間、日本からの学校や行政、そして企業関係者などの視察団をご案内していました。
「なんのための受験なのか?」 「受験をしてどうするのか?」という所の設計にみなさん悩んでいるとのことでしたが、こちらでは学校や大学、そして企業やスタートアップなどを訪問していました。「なんのための受験か?」というようなことに対する答えが見つけられるような素晴らしい学校の視察もしましたので、また改めてご紹介したいと思っています。
◆やっと5歳になった次男
ところでそんな最近ですが、次男がやっと5歳になりました。オランダでは4歳の誕生日を迎えた子から順番に入学してくる子が多く、うちもそのパターンだったので小学校に入学してからようやく1年経ったのか…という感じ。なんか次男の場合は、まだ5歳?まだ1年?という感じがします。
オランダの場合4歳で入学した時には「グループ1」という学年に入ります。まあ日本的には1年生でしょうか。ただ4歳なので年齢でいうと日本的には幼稚園の年中さんに当たります。
実際、やっていることは日本で言う幼稚園や保育園と同じでしょうか。小学校といっても基本的には遊んでいる感じです。まあ、そんなこともあり子どもは学校が大好きです。
もっともオランダの場合、よっぽど学校が嫌いだったり合わないと思ったら、すぐに転校しちゃうことの方が多いようです。
ただ、うちのイエナプランの学校ははっきりしていて、全てにおいて子どもが楽しいと思うことを一番大事にしている学校なので、上の学年もこのチビの学年の雰囲気とほぼ同じです。なので学校が嫌い、と言う子はほとんどいないと思います。しかも、うちはイエナプランなので基本異年齢が同じクラスになっていて、しかも留年とか飛び級もいるので、小学校の時点で年齢はバラバラです。
現に、うちのチビは4歳になった昨年2月に入学しましたが、7月ですぐに終学期を迎えたので、9月からの新学期に改めてグループ1に在籍しています。つまりすでに1学年遅らせているわけです。こう言うパターンはオランダ人にも多くて、年明けに誕生日を迎える子は1つ学年を遅らせる子も多いのです。
なので、うちの次男も実は今は2回目のグループ1に所属しているのですが、周りの友達も半分は同じだし(異年齢学級なので)多分本人は全くわかっていないでしょう。
ただ、もう丸1年経ったので、と言うか丸1年かけて、ようやく最近クラウス内でオランダ語で挨拶ができるようになりました。
もともとかなりの人見知りな上に、オランダ語のハンデもあるので、我々親も全く強制せず、またクラスの先生や周りの保護者も誰も全く強制せず、だったのですが、1年かけてようやくできるようになりました。
それどころか、友達とはオランダ語で普通に話しているし、いろいろなことが分かっているようです。
2歳でオランダに移住した次男は、そもそも日本語もままらない状態で来ているので、小学1年生のタイミングで移住した長男とは、語学の習得状態が違います。次男は、日本語に置き換えることさえ出来ない状態だったからです。
なので、次男はオランダ語をオランダ語のまま理解し、たまたま知っている日本語とマッチさせるという状態です。もちろん家庭では日本語ですが、おそらく今後はオランダ語が第一言語になって行くと思うので日本語を同時に発展させていかないと、という感じです。
◆学芸会で自信満々に
そんな次男が、先日、学校で発表会を行いました。うちの学校は1年に1回、全クラスが順番に全クラスの前で演劇を発表します。これはイエナプランの特徴の一つでもあり、非常に大切にしている行事です。ちなみにグループ7,8(日本で言う5,6年生)とかになるとかなりレベルも高くなります。
次男のクラスは最年少クラスなので、内容もやってることもめちゃくちゃ。しかも日本みたいにちゃんと練習とかはほぼしないので、完成度はそれはそれは目も当てられないレベルです。(もうそれにもすっかり慣れましたが)
しかし、全クラスの前でちゃんとしたステージでの発表なので、意外にもみんなが見ています。発表するクラスの保護者たちもほぼ全員参加です。(ちなみに、平日の朝です)
次男は、昨年は全く何も出来ず、ただステージの上でその他大勢として少しだけ歩いただけだったのですが、今年はちっちゃな役も与えらえれ自分なりにそれを理解して演じました。(客席にお尻を向けたままとか、めちゃくちゃでしたが)親としては、昨年からの成長にもうその時点で、びっくりしたのですが、さらにその演劇のなかで、みんなで歌を歌いました。たまたま先生が、近くにいた次男にマイクを向けました。するとマイクを通じてちゃんと歌を歌っているのです。もちろんオランダ語の。(親でさえ分からないのに)
それを見ていたクラスの保護者や先生はもちろん、学校中の人が、今までほとんど人前で喋ったことのない次男をとても褒めてくれました。さらに他のクラスの先生まで「この前の演劇で、歌が歌えたじゃない!すごいね!!」とみんながベタ褒め。まあ我々は日本人ということで、オランダの学校ではおそらく、何もしてなくても目立つ存在だと思うのですが、それにしてもみんなが見ていてくれて、それをみんなですごい褒めてくれるのです。
次男が、これで自信を持ったのは言うまでもありません。彼はこれだけで、学校がもっと楽しくなり、全てに自信を持つことができるのです。
イエナプランの学校は、こう言うところが非常にうまいなあと思います。学校全体で子どもを認めてあげて褒めて伸ばす。まあ、オランダっぽいと言えばオランダっぽい感じでもあるのですが、日本の小学校、少なくとも昔、自分が通っていた時には、あまりなかった雰囲気というか、ノリと言うか、仕組みというか…。
どうしても日本の学校だと、運動が出来る子、勉強ができる子とか、何であれ何かの競争軸で優れていないと自信を持ちづらい制度だと思うのです。
ところがイエナプランの場合は、そもそも年齢が違う子が一緒のクラスになっていることもあったりして、全員が一緒ではない、全員が出来ることはないという前提にクラスが設計されています。
現にグループ1,2であっても、メンターというお世話係りと、お世話される子がセットになっており、学年が上がると、お世話されていた子が、お世話する係り(=メンター)になるのです。これなど、「出来ない子がいて当たり前」という制度ですね。笑。
そう言えば、日本と比べるとオランダ(ヨーロッパ)は弱者とか失敗に優しい社会制度になっているなあと感じることがあります。人種も宗教も違う人ちが集まっているので、髪の毛の色の規定とか、パーマはダメとかいうような校則もそもそも存在しないですしね。
ともあれ、なんだか分からない歌をチョロっとマイクで全校生徒の前で歌ったことで、大きな自信をつけた次男。多分、彼はあれだけで、オランダでの学校生活に自信を持っていけるやっていけるようになるでしょう。
特に小学生とか小さい頃は、子どもの自信なんて、ほんの些細なことで付けることが出来るものです。もちろんそれは大人にとってはほんの些細なことでも、当人にとっては、それはそれはビッグチャンスになりうるかもしれません。周りの大人はその瞬間をぜひ見逃さないようにすると良いかもですね。
そう言えば、学校や社会全体で、そうしたチャンスを見逃さないようにしているオランダは、だから生きやすいのかもしれません。受験も存在しないのですが、ともあれ子育てのしやすさは異常です。
※当ブログ「おとよん」がディスカバリー21さんから、出版されることになりました。ブログの内容にプラスして、Q&Aコーナーとして実際に日本で使える子育てメソッドを掲載予定です。もし、「こんなことが聞きたい」というご質問があれば、お寄せください。
はじめまして、こんにちは。質問です。我が家の長男は、四月から年長さんになります。保育園の先生からは『長い時間座っていられない。それが小学校入学までに乗り越えたい課題』と言われています。日本ではここ数年、席に着いていられずウロウロする子が小学校で増えてきている、とよく聞くようになりました。オランダではどうでしょうか?所謂『発達障害』の話題は保護者間の話やメディアで取り上げられることはありますか?
コメントありがとうございます。「発達障害」の話、確かに日本では良く耳にしますね。ただ、オランダでは全く聞きません。もしかしたら、それは個人的に聞いてないだけかもしれないのですが。。。オランダでは、4歳の誕生日を迎えた子から、順番に小学校に入学します。もっとも、6歳くらいまでは日本の幼稚園、保育園でやっていることとあんまり変わりません。うちは次男が5歳で、まさに最初の学年にいます。送迎で毎日のように学校には行きますし、学校行事のボランティアや、朝は毎日15分、時に30分くらい、朝のクラス行事を親も一緒に行います。その時に見ていると、やっぱり落ち着かない子は、少しいます。ただ、そういう子も時間をかけると(半年くらい)全然、落ち着いた普通の子になっています。ちなみに、うちの次男はスーパーシャイで、全く人前で喋ろうとしませんでした。でも放っておいたら1年くらい経って、ようやく喋るようになりました。もちろん、語学の問題もあるんですが、それ以前に性格の問題でした。で、この実質、幼稚園時代(2年)を経て、そのままの雰囲気で、実質の小学校(日本でいうと小学校1年生)が6歳くらいから始まります。とはいえ、同じ学校の上の学年に、単純に上がるだけです。なので、ここで「席についていられない」「徘徊する」みたいな問題は皆無です。日本のいわゆる「学級崩壊」も見学したこともり、結構キツイなあ、と思ったことありますが、日本では逆になんでもかんでも「発達障害」というレッテルを貼ってる感がしなくもないです。(実際に、アメリカでそれを最初に名付けていわゆる病気扱いにした研究者が、「実は発達障害なんてない」「薬剤メーカーが薬を売りたかっただけだ」と言ってるドキュメンタリーを見たことありますが)オランダにいると、「小学校入学までに乗り越えたい課題」というその課題設定自体が、どうかな?と思ってしまいます。子どもは自由に動き回る者、という前提で制度設計しなおすとか、そういう子でも思わず座ってしまうくらいの楽しい学校にするとか。オランダの全部の学校がそうではないと思いますが、少なくともうちの子どもが通っている小学校は、そういう感じがします。発達障害は、全く聞かないです。(そういえば、日本から視察にきて、「子供達が落ち着いている」と言って、ビックリする先生も多いです。)
ご返信ありがとうございました。
発達障害、というキーワードから、日蘭両方、また、それぞれの様々な教育現場を比較した、為になるお話を聞けました。
視野の広さを感じます。
恐縮ですが、同年代です。が、私は地元の都道府県以外で生活したことがありませんし、交友関係も学生時代から広いほうではありません。
自分の偏った価値観に子供を縛り付け、私も子供も息苦しくなったり。
なので、色々な大人と接する機会を子供に与えることは心がけています。へんじんキャンプのようなものも参加させてみたいです。また、情報発信いただければと思います。
(肝心の子供は清掃ボランティアに誘っても、『DVDみたいから』と断ってきたりします(涙))
職場は職場で未だ、べき論や同調圧力が蔓延っていて、なんだか何かに絡め取られている気分です。『誰か得しているのかい?』とふと思います。
特性が異なる個々がそれぞれの長所を生かせる制度設計。職場にも学校にも必要ですね。みんな幸せに、という視点があると人にも自分にも優しくなれそうです。実はこの視点、最近持ち始めたばかりです。つい最近まで、べきべき論者でした。人生観世界観、大きく変わりますね。
当方、現状は仕事と家事育児でヨレヨレですが、それぞれに楽しみもあり。
吉田さんは多忙な毎日をお過ごしのことと想像しますが、お身体を大事に。
ブログや記事、今後も楽しみにしています。オランダのお話、とても貴重です!