最近良く聞くこととして、やがて「仕事はAIに奪われる」とか、「今ある仕事の60%をAIがやるようになる」なんてことではないでしょうか。

問題はそれがいつで、何%か?だけであって、人間の多くの仕事はAIが代わりにやるようになる。ということで、今度は将来「AIに代替えされない仕事、代替えされる仕事一覧」なんていうのが話題になったりもしています。

たとえば代替えされる仕事として「銀行員」なんていうのがあったりすると「あ、パパの仕事が入ってる!」ということで、ちょっとソワソワしたり「やっぱり、この仕事は続かないのか…、俺もそろそろ転職を考えないと!」なんて思ったりすることもあるのではないでしょうか?

実際オランダでは銀行員はかなり減っていて店舗があっても口座開設のためだけに人がいたり、少し前には大量リストラのニュースが出たり、もしかしたら日本のちょっと先を行く現状が見えるかもしれません。

一方で日本では人口減少&高齢化のため、そうしたAIに代替えできる仕事はどんどんした方が良い!という議論も聞かれます。

そんな中、日本からの帰りの飛行機の中で読んだのが新井紀子さんの『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(2018, 東洋経済新報社)。

ということで今回はネタバレしないようにしつつ、そこに書かれていた気になることを取り上げてみます。

 

AIが得意なことをやっても意味がない?

筆者の新井さんは数学者であり「東ロボくん」というプロジェクトで、2011年に「ロボットは東大に入れるか?」という人工知能のプロジェクトを行っている方です。

結果としては、すでにニュースになっているのでご存知の方もいるかと思いますが、現在はMARCH合格レベルにまで達しているようです。すでに「うちの子より優秀だ!」「俺の学歴はすでにAI以下か!」なんて、思う方もいるかもしれませんね。

しかし、このレベルの人がやっている仕事が全てAIにとって変わられる!ということでもありません。

AIが得意のは、例えばパズルを解くような、ある一定のルールや条件がある中で推論と探索能力を駆使する問題だそうです。さらに単純にファクトを答える問題。なので自由に記述する問題とか、意見を述べるような問題に対しては、いまだに対応できないとのこと。

「まだ人間が活躍する余地がある!」なんて、これを聞いてちょっとホッとした人もいるのではないでしょうか?

しかし実は全く安心できないと思います。というのは日本の学校の勉強って、ほとんどがこのAIが得意としている能力を伸ばすことになっていないでしょうか?誰よりも早く正確な答えを出すことが求められ、それが成績優秀として評価されること。そしてこれは、自分が子どもだった頃から基本的には変わっていないのではないか?と思うのです。

自分の場合はクリエイターという職業のため、常に「新しいこと」「人がやったことがないこと」というが求められる環境なので(言ってみれば、絶対の正解はない世界)大人になってから、すごくこのことを意識し始めました。

なので自分の子どもにも、こういうことが考えられるようになって欲しい。そのためにはそれに適した環境を、と思ってオランダに移住した経緯があります。

 

AIに仕事を奪われた人は他の仕事に就けるのか?

さて、ということでAIが得意なことをやっても人間はとても叶わないので、そしてAIができる仕事はAIに任せた方が良いので、AIができない仕事をしないといけなくなります。

となった時に今、問題となっているのが、いや正確にはまだ問題になっていないのが「実は正確に教科書が読める子どもが激減している」ということだと言うのです。教科書の内容が正しく読めないために、問題が解けないと言うことが起こっているらしいのです。

このことはICT教育とか、プログラミングとか、英語とかとかの前に対応しないといけない大問題であると書かれています。そして「教科書が読めない」と言うことで、AIとの競争以前の問題になっていると指摘されているのです。

詳しくは本書を見てもらいたいのですが、AIに奪われた仕事に従事していた人が必ずしもAIができない仕事に就ける訳ではなく、むしろ現状ではほぼ仕事には就けないのではないか?と予想されています。AIは神でもないし万能ではない。しかしAIに仕事が奪われた人たちが、仕事に就ける可能性はかなり低いと言うのです。

こうならないために教科書を正確に読む、と言うことを徹底しないといけないのですが、現状はまだそのこと自体の認知が低いようで、日本では実態があまり把握されていないようです。

 

ということで、実はAIが優秀になって人間の仕事を奪われると言うこと以前に、日本人の圧倒的な学力の低下が起こっていることでAIが重宝されるようになるのかもしれません。

確か、花まるの高濱先生も「文章題が解けないのは数学力が低いからではなく、国語力が低いから=文章が読めていない子が多い」と言っていた気がします。

自分も、今年から子どもに日本語を家で教えることを始めました。試行錯誤で国語の授業?をやっています。いわゆるホームスクールごっこです。

ここで思うのはAIが出来ないことをやれる子どもにするのも、なかなか大変だな、と言うこと。どなたか、良い方法があればお知らせください。