ただいま、オランダは絶賛夏休み前。しかし気候的にも、気分的にも完全なる夏モードになっており、人によっては、すでにバケーション中という状態です。

で、こういう時期になると子どもの学校まわりでも、いろいろな行事があったりします。

今日は、そんな中で子どもの「発表」に見る、日蘭の違いをお伝えしたいと思います。個人的には、このオランダの現実を知ることで、やっとこさ今まで自分がやってきたプレゼンや、日本で聞いていたプレゼンと、オランダ(というか、世界?)の人がやるプレゼンの差を直感的に思い知った感じがします。

 

なんでもスーパーぐだぐだ

さてさて、実は以前にもこのブログでも何度か書いたことがあるのですが、移住してきて始めてオランダでの子ども達の行事や、発表会のぐだぐだっぷりに立ち会った時は、呆れるというか、半ば衝撃でしたw。

例えば、「子どもに自信を持たせるには?イエナプランの学芸会の意外な効果」という記事では、発表会をすると、どんなに下手でも学校中のみんなが褒めてくれて、どんな子でも自信満々になる、という話を書きました。

とにかく、発表会的なものは日本的に言うと、準備50%(いや、もっと下かな?)の段階で本番を迎えるかのごとく、未完成度200%です。なんでもかんでも、だいたいが「えっ、これ本番?」と言う状態です。

最初に見た時は、その完成度の低さに仰け反ったくらいです。

実はこの完成度の低さ、オランダでは生活におけるいろいろな場面で遭遇することがあります。オランダで活躍しているライターの山本さんも、自身のNoteに書かれていますので、ぜひ参考にしてください。「感動を取るか、楽を取るか?無理をする日本人と、頑張らないオランダ人

オランダの良い面はやっぱり「楽」と言うことでしょうか。「楽しい」というニュアンスも入っています。

で、このスーパーぐだぐだ発表会が、先日行われました。それは長男のギターの発表会でした。

 

前日まで発表会やるの!?状態

細々とイヤイヤ、ギターを続けている長男。普段はどうしてもサッカーに力を置きがちなので、ギターの練習もままならず。たま〜に思い出したように、ちょこっと家で練習する程度。もっとも先生も、あんまり何にも言わない「やりたければやれば」状態。弾いてる曲も、アフィッチとかのDJものや、EMD的なものばかり。好きな曲を練習するのはいいと思うんですけど。ま、You tubeを見る感じの延長みたいなもんです。

で、先生も普段の連絡などかなりいい加減なんですが、今回の発表会も前日まで、本当にやるのか?やらないのか?連絡もなし。最終的に前夜に、シレッと「やるよ」的なメールがきたくらい。詳細は全く不明。(もしかしたら、教室時に子どもには伝えているかもしれないのですが、当の本人は詳細把握しておらず)

本人も、「連絡なかったら行かないから」と言っていたものの、シレッとメールが来たために、しぶしぶ参加することになりました。

で、行って見たら、これがまず予想外の人の多さ。どうもギターだけではなく、ピアノ、そしてボーカルのクラス合同でやる発表会。演者もまさに老若男女が集まっています。

そういえば、会場もなかなかの立派なもの、と言うかオランダらしい趣のあるもの。まあ、公民館的なシアターと言った感じでしょうか。中にはカフェが併設されており、まあいい感じの施設です。それなりに音響もしっかりしてるし、ステージ的なものもある。

妻などは、「あれ?こんな本格的だったんだ?」「これ、うちの子、出演していいの?」的な感じを受けています。「うちで、ほとんど練習してなかったけど」と言う親の心配をよそに、当の本人は、特にビビったり緊張する様子も全くありません。

挙句の果て「楽譜忘れた」と言い出す始末。妻は「パパに大至急取りに行ってもらおうか?」と言う言葉が、口から出かかっている状態です。

そんな中ピアノの発表が行われています。ただし、なんか日本での発表会とは、ちょっと様子が違います。緊張感のかけらもありません。さらに大人も子どもも一様にレベル低っ!って感じですが、そんなことは一切誰も気にしません。むしろ演奏を終えた当人たちは「やってやったぜ!」的な雰囲気ですし、なんなら、「あら、歌えなくなっちゃった」とか言いながらボーカルを発表した奥さんまでいましたが、終わったらみんな拍手喝采。(しかも、みんな満面の笑み)まあ、なんとなくオランダ式ぐだぐだ発表会には慣れて来たつもりだったけど…「あ、こういう時もこんな感じで、いいんですね…」的な。

でも、とにかく当の本人たちが、みんな楽しそうなのはまあ良いところかなあ。

(ちなみに、オランダでは本格的な楽団の発表会とかコンサートにも行ったことあるので、そういうプロはプロで、もちろんレベルは高いので誤解なきように)

で、そうこうするうちにうちの長男の出番が回ってきました。妻はもう真剣に心配顔。ところが長男は、飄々とステージに向かって行きます。

それで、どうなるのかな?と思って見ていたら…。ステージにちょこんと座った長男の後ろで、先生が何やらPCをいじっています。そしてなんと、おもむろにYou tubeをかけ始めるではないですかw。しかも、結構な大音量。

で、長男はそのYou tubeに合わせて、かな〜り適当にメインのメロディをかるーく弾くだけ。なんなら、You tubeの方がボリュームも大きいので長男のギターはあんまり聞こえませんw

それでもなんか曲調のせいか単純にボリュームのせいか、みんなが意外とノってくれて、長男もかなり演ってるつもり。「ええっ?」「これあり…?」「こういうの発表会って言うの…?」なんて疑問を挟む余地は全くありません。そうです。ここは子どもが世界一幸せの国オランダです。You tubeに合わせて、いや、むしろYou tubeが終わったので演奏を終えた長男は、颯爽とステージを後にします。

で、こっちに向かってきたので、一応(しょうがなく)ハイタッチ!長男も満更でもない様子。そして、このやりとりを見ている周りのオランダ人も、拍手喝采。

「えっ、You tubeとか発表会で流していいんだ…」とか、「むしろYou tubeのボリュームの方が大きかったよね…」なんて野暮は一人も言いません。繰り返しますが、ここは子どもが世界一幸せな国オランダです。この会場ではこの一連の流れに対して、一ミリも疑問はないのです。疑問、と言うか、心配と言うか、緊張していハラハラしていたのは、妻だけなのです。が、それさえもなかったことにしてしまうのが、オランダなのです。と言うか、むしろ長男には全く根拠のない自信を与えることにさえ成功しています。You tubeのくせに。

 

と言うことで、一連の発表?が終わった長男は、後日「僕ね、もうこういうの(発表の類)しょっちゅうやってるから、全然緊張しないよ」「全然大丈夫だよ」とシレッと言っていました。

で、実はこのマインドを持つことが一番大事、と言うか、日本(の子ども)には足りないのではないか?と思ったのです。日本では何事にも非常に高い完成度を求められますが、それがちょっとでも間違ったり、不足していたらもう大変ですよね。そもそも全体の完成度が高い、にも関わらず、そこには触れられず、あまり目を向けられず、「失敗」にばっかり目を向けられる、と言うか。。。失点は厳しく指摘されるものの、良かったところはあまり認められないと言うか。しかも、この高い完成度、子どもの時からずっと求められているような…。

前述した山本さんの記事にもありますが、オランダは普段から大人でもさえも、そんな完成度は一切求められません。

このマインドセットを得ることで、プレゼン自体に余裕が出て、むしろ楽しめるような感覚になると思うのです。オランダ人が、みんな人前で話したりプレゼンがうまいとか、どんどんスタートアップを始めたりするのは、こういうところに起因してるのではないか?と思うのです。

自分も前職時代は、まさにプレゼンするポジションにいたので、今まで相当数のプレゼンをしてますが、自分のプレゼンと、外人のプレゼンの違いってこういうマインドの差にあるんではないかな?と思い至りました。

でも、日本人でオランダのこの生温かな感覚に慣れてしまうと大変です。人の失態を今か今かと待ち構えて、常に眉間にシワを寄せている日本人の皆さんから仕事をしてる間中、矢のような視線を一身に集めることになりますから。(すいません。分かりやすくするために、ちょっと誇張しています)

まあ、もちろん日本人でもプレゼンがうまい人はいっぱいいますけどね。

子どもの時から人前で発表したり、自分の考えを述べること、伝えることにプレッシャーが全くない環境。海外での教育ってこういうメリットもあるかもしれませんね。と言うか、こういう方が大きいのかもしれません。なにも英語だけではないのです。

と言うことで、まさかのYou tube発表会だったわけですが、最後に長男が弾いた曲と言うか、バックで大音量で流れたYou tubeをご紹介します。(妻は、自分が緊張してビデオとか、写真が撮れなかったそうです)「本当に弾けるの?」と心配もしたくなるし、そりゃ〜、「You tube流したくなるよ」と言う曲ではありますね。でも、ちゃんと聞くと意外とギターのリフ、ほとんどないじゃん!って感じの曲でもありまして。まあ、なんか、やっぱり、色々とめちゃくちゃな訳です。はい。で、これが「子どもが世界一幸せな国オランダ」なんですね。

日本の方が確実に、ちゃんとしてます。いろいろが。