台風直撃で、今日は全体的に自宅待機でしょうか? ヨーロッパへいらっしゃる方への影響も出ており、こちらでも緊急対応でバタバタしています。

ところで日本では2学期も始まったこの時期、オランダでは新シーズン、新学年がスタートしました。ヨーロッパでは新学年が9月スタートなのです。

なので、こちらでは日本的には4月のフレッシュな新学年が始まったばかりです。

さて、今回はこちらでのダイバーシティについてお伝えします。新学年が始まって、いろいろなニューフェースが学校にも入って来たからです。

 

◼️「違い」を前提にしている社会と「同じ」を前提にしている社会

ところで、日本でも最近は「多様性(=ダイバーシティ)が大事」なんて言うことも、多くなったのではないか?と思います。でも、実はそう言われても、あんまりピンと来ていない人もいるかもしれません。「なんで、そんな多様性が大事なの?」と。

それこそ、自分が日本で子ども時代を過ごしていたころは、校則には髪の色や、髪型の決まりなどが普通にありました。もちろん中学校では制服も男女で決まっていました。今はどうなっているのか分からないんですが、この手の校則、基本的にはオランダではありません。

オランダだと、この手の校則は人種差別に当たるかもしれません。そもそも多くの人種が存在しているので、髪色は黒じゃなきゃいけないとか、パーマはダメとかもう全く成り立ちません。もちろん、ミックスの子だって多いし、さらにブルカといったような宗教的な装いもありますので。

こういうところからして、オランダの場合、そもそも人と「違う」ことが前提の制度設計と言いますか。日本のように「同じが当たり前」という前提の制度設計とはだいぶ違います。なので、「人と違う」「みんなと同じじゃない」ということだけが理由でイジメにあったり、仲間外れにあったりすることは、ないように思います。(もちろんオランダでもイジメはありますが)また、逆に「空気が読めない」ということもあり、何事もハッキリ、ズバッと分かりやすく伝えないといけません。英語(やオランダ語)はそういうように意志を伝えることには向いている言語だと思います。一方で、御察しの通り、「空気を読んで」「忖度しながら」「柔らかく伝える」ことには、日本語は向いていますね。

オランダの子どものサッカーチームや、学校はダイバーシティが当たり前。もちろん地域差があったりもしますが、人種のミックス度と、多くの宗教の人が入り混じっている感じは、日本で言う「ダイバーシティ」とはレベルが違うかもしれません。

だからこそ、「違う」を前提として社会制度設計でないと社会が成り立ちません。日本の場合は、「同じ」を前提としていながらも、そこに「違う」ことをなんとか認めようとしているから、いろいろなところで無理が生じている感じがします。「違い」を前提にしていると、同調圧力が全くなく、「人と同じこと」をする必要もないので、非常に生活が楽です。その代わり、いろいろがめちゃくちゃな場合もありますが、まあ基本的には楽なんですね。「同じようにする」必要性が全くないので。

で、じゃあ、こっちでの多様性ってどんなことになっているのか?ということで、身近な例を挙げてみます。(ただ個人情報が特定されるとアレなので、多少ボカシたり、実際とは微妙に変えたりしときます)

 

◼️実際、どのくらいのダイバーシティか?

新学期を迎えた、うちの学校ではオランダ人だけどアメリカ帰りで英語しか話せない子(4歳児)が入ってきました。ドバイ帰りのカナダとオランダ人のハーフは、英語もオランダ語もペラペラ(9歳児)。両親がスペイン人とフランス人で、スペイン語と、フランス語とオランダ語、そして英語が話せる4歳児もいます。

黒人とのハーフの子もいます。この子はオランダ語も話せますが(両親も)国籍はスペインのようです。

ドイツ人夫婦の双子の子もいます。台湾とオランダのハーフもいます。ロシアと韓国のハーフや、トルコとオランダのハーフもいます。と言うか、この辺はだいたい、もう何人か?なんて誰も気にしてないし、どうでもよくて、(学校生活においては)オランダ語が話せれば問題ありません。例えば、うちの日本人兄弟もオランダ語が話せますので、多様性の一つのピースとして、全く問題なくやってます。(今のところイジメにはあってない)

うちの学校がたまたま異年齢学級ということもありますが、小学生であっても留年&飛び級もいます。なので、年齢のダイバーシティもあります。おそらく1つのクラスに最大3才違いまでがいるかと思います。(実は、うちの次男も最初の学年を2回やってます)

実はたまたま、うちの周りにはイスラム系や黒人がいないのですが、街を歩けば、まさに犬も歩けば状態で、いろんな人がいます。

ダイバーシティは、こういう人種、年齢、宗教だけの話ではありません。親が離婚している子も多く、中には片親もいるし、パートナー(婚)もいるし、再婚もいます。この辺も全く分かりません。もちろん、オランダ人はこの辺のことは隠しませんので普通に公表してますが。

ここに、さらにさらにオランダっぽい多様性が加わります。それはジェンダー、つまり性別です。

オランダでは普通に同性婚(パートナー)も認められています。なので、子どものママが二人!なんて例もあります。レズのカップルですね。このママカップルは面白くて、一人がモデル、一人がお医者さん。二人で順番に子どもを産んでいます。(流石にパパのことは知るよしもありませんが…)で、二人で交互に送り迎えに来たりするので、最初は事情がつかめずに非常に混乱しました。一方で、パパ二人も普通にいるでしょう。

ジェンダーの話でいうと、子どもなんだけど性別を変えてしまう子どもまでいます。これは、おそらく体と心の性別があっていない、というパターンだと思います。で、名前も変えて完全に新しく生まれ変わった!なんて子もいます。で、これも普通に周りにはアナウンスしてくれるので、「はい。分かりました。おめでとう!」みたいな感じで接しています。

あとは養子もあるので、オランダ人カップルだけど子どもの人種的には中国人で、パスポート的にはオランダ人なんてこともあります。

 

とまあ、こんな感じがオランダで言うダイバーシティです。で、こうなると「空気を読め」は全くできなくなります。ハッキリと言わないと何も伝わりません。

もちろん意見の相違もありますし、コンセンサスを取るのも難しくなります。その反面に、だからコミュニケーションが上手になったします。

だからちょっと外国に行って、ダイバーシティを体験しましたとか、日本で同じ会社や学校に外人がいるからと言うだけで、「うちはダイバーシティです」と言うのとは、だいぶ違います。

オランダの場合は、ここに挙げたような例が子どもの世界なのです。こんな多種多様で意見が溢れる(みんな主張が激しいw)環境で育ちます。そして、こんな環境で育った子どもと、皆さんのお子さんは、大人になった時に仕事したり、交流したりする時代です。

 

で、元に戻るとこう言う環境では「同じこと」を前提しにた校則とかは全く成り立ちません。「違う」からと言うだけでイジメも起こりません。(もちろん他の理由ではあると思いますが)そして、学校の校則という狭い世界だけの話ではなく、これは国(を超えて)の制度設計の考え方の話だったりします。

こういう世界で育った子どもたちが、徐々に日本にも入ってきます。今はまだその数は少なくとも、これから大幅な人口減少、超高齢化を迎える日本は、この多様性のある世界と、ガッツリと交わらなければやっていけなくなるのです。

元々は生物多様性が大切だと言われているのは、自然界の中で多くの種が相互依存しながら絶妙なバランスの中で環境が維持されていく、ということだったと思うんですが、人間の場合も一緒で、いろんな人がいるからこそ、豊かに、楽しく、刺激に満ちながら持続的に発展していくものだと思うのです。

世界は多様性にあふれています。まずは親がその現実を知ること。そして、お子さんにもぜひ、そんな世界を体験させてあげてみてはいかがでしょうか?? きっと人生を豊かに生きられる子に育つのではないか?と思います。

個人的には、最初は漫画やドラマにでもなりそうな、ジェンダーの多様性が衝撃でした。このあたりの話は、実は以前一度いらしたことがあるんですが、脚本家や漫画家の方のシナリオハンティングにも最適な場所だったりします。かなりレアな需要だと思いますが…。

ダイバーシティの生み出すカオス。ちょっと経験してみたくなりませんかw? 意外とここに日本の将来がかかっているかも知れません。