今シーズンから、なぜか長男の所属する100年以上の歴史を誇る地元の名門サッカーチームのアシスタントトレーナになりまして…、というか、なってしまいまして、早くも2週間くらい経とうとしています。

長男は、好きなサッカーがやっと始められたので、かなり楽しんでおりますが、何を隠そう、サッカーはもっぱら観戦専門(昔は、ゲームも専門)だった私も、意外や意外、楽しんでおります。

もちろん、サッカーを基本的にはやったことがないのでトレーニングの方法は知らない、さらにオランダ語が喋れない、という状態なので、まさに、「いるだけトレーナー」なのですが、天然芝のグランドが何面もあるグランドに出ると、自然と体も動くし、何よりも子ども達との交流も楽しいものです。(全然、できてないけど)

そして、さらに意外に楽しいのが、保護者同士のコミュニケーション。毎日のようにWhatAppでの会話がオランダ語でなされているのですが、まあ、オランダ語の勉強にもなるし、こうしたことを通じて、だんだんとオランダ社会に入って行っている感じがして、また仕事以外の知り合いの輪もグッと広がっているので、地域に入っている感を感じます。

約1年半前には知り合いが一人もいない状態でオランダに来たことを考えると、我ながら大きな進歩です。

 

■オランダのサッカーは国民的スポーツ

さて、このサッカー。オランダでは、ホッケーと並び国民的なスポーツです。歴史があるのはもちろんですが、地元のクラブチームに所属する、ということを通して、オランダ社会を学ぶ、という場でもあるようです。

大きなクラブチームになると、サッカー以外にも、ホッケー、テニス、ビリヤードや、ダーツなどもあり、しかも子どもから、大人までが1つのクラブに所属するのです。どんな種目であっても、同じ色のユニフォームを着て、同じクラブ員として、何百人規模のメンバーになります。

年長者は、年少者の面倒を当たり前に見ます。そして、保護者の参加も盛んです。例えば、毎週水曜日がトレーニングの日ですが、ほぼ参加者全員の親が付き添いに来たり、ボランティアで来ています。

そもそも自分がトレーナーになった経緯は、クラブから水曜日のトレーニングに立ち会える人の募集をしていました。仕事がら時間を調節できるので「水曜の練習に立ち会うこともできますよ!(オランダ語はできませんが)」と言ったところ、「素晴らしい、ぜひ来て欲しい!もちろん、子どもはクラブに入れるから!」ということで、昨年からウェイティングリストに乗っており、今年も無理な気配濃厚だった長男が入れる、ということで仕方なく応募した、というのが経緯です。

ところが、実際に、蓋を開けてみれば、他の保護者がちゃんとしたトレーナーをやってくれるし(というか、多分、「こいつじゃダメだ!」と思われたのだと思いますが)そもそも、練習の付き添いで、ほぼ全員の保護者も来ているし(パパも40%くらいはいます)なんか、勇気を出して手を挙げて良かった、という状態です。

 

■サッカークラブは「地域全体で子どもを育てる」象徴

しかも、一応スタッフとして入っているので、どんな風に運営されているのか? 親の関わり方、そして地元の企業の関わり方なども見えて来ます。

結局、地域全体でこうしたクラブに関わっているということなのですが、平日の夕方に子どものサッカーに付き合えるパパがいるということは、そうした時間に子どもに付き合える働き方が存在していること。

さらに、それを普通に受け止める周りの空気も大きいです。(何と言っても、2014年に日本で育休を取った時には、平日の仕事をしていないパパに対しての周りの目がかなり厳しく感じました)

そして、もちろん、その活動を金銭面で支える地元企業。

つまり、オランダではこのように、子どもたちを地域で支えるための(平日に時間を作れるという)働き方が実現しており、ワークシェアや、働き方(改革)が完全に根付いているのです。

おそらく、働き方を改革する目的は、「子どもを社会の真ん中に置き、地域で子どもを育てるため」(=家族と自分の時間を大切にする)だったのです。

もちろん実際は、こんな単純なことではない、このことだけが目的ではない、とは思いますが、でも、このように「働き方改革」の目的を明確にしてみると、改革もやりやすいのではないか?と思います。

日本の場合、「何がなんでも残業禁止」みたいなことが前面に来ているので「働きたいのに働けない場合はどうするのか?」とか、「残業をさせないための、仕組みづくりの仕事が多くて残業している」みたいなことになっているのかな?と思いました。

さて、ここで我らの『1 more baby応援団』の『18時に帰る』(プレジデント社 2017)には、オランダの子育て環境について、こんな言葉があります。

<子どもは地域で育てるというチーム主義があたりまえにある>

<地域全体で子育てに関わっていこうという流れになれば、オランダのように子どもたちが幸せに暮らせるようになると思います。>

もちろん、オランダ全部が全部、こうではないとしても、多くのクラブを通じてこうした考えは共有されていると感じます。だからこそ、サッカー(クラブ)が国民的なスポーツになっているのではないか?と思います。ただ、サッカーが好きなだけではないのです。地域に根ざしたスポーツ、それを通じて地域で子育てをする、という狙いがあるのです。

「地域で子どもを育てるための働き方改革」この考え方は、日本にとっては何かヒントになるような気がします。

 

ということで、にわかサッカートレーナーとしては、子どもとコミュニケーションが取れないために、サッカーの技術が低いことよりも、オランダ語ができないことが大問題となってます。

なので、サッカーのためにオランダ語を学ぶ、というサッカー選手のような状況にもなっています。

もちろん、サッカーも練習しないといけないので、自分も18時には帰りたいのですが、水曜のトレーニングに付き合うためには、その分、夜中まで仕事をしないといけない、という…。残念ながら我が社は、オランダであっても働き方改革は、当分実行されそうもありません。。。