8565611806_c32b8f032c_bオランダに移住して、まるまる3か月が経とうとしています。現在、長男はオランダ語を専門的に学ぶ、語学学校の小学校(というのがあるのです)に通っています。

ここでも何度か触れていますが、「オランダ語ができない子のための学校」なので、同級生はブルガリア、ウクライナ、シリア、トルコ、ソマリア、エチオピア、モロッコ、ジョージアなど出身地もバラバラです。いわゆる移民のための学校です。

日本人にとっては、これらの国はちょっと馴染みが薄いかな?と思いますが、自分自身も、ここに来るまでは、あまり意識をしたことのない国ばかりでした。

長男は、これらの子たちと、日本の子どもがしているのと変わらない遊びをしていますが、国籍とかは全く意識していないようです。

余談ですが、イギリスがユーロ離脱を決めたのは、この移民問題が原因だとされていますよね。ユーロ圏内には、(我々も含むというか、厳密にはEU加盟国内からの)移民が多数おり、もちろんオランダも例外ではありません。もっとも、オランダは、こうした語学学校があることも含めて、移民政策については、上手くやっている方ではないか?と思います。当然、オランダ国内にも移民反対の動きはありますが……。

■知らない国のことには興味が湧かない

話を元に戻すと、長男がこうした国の子どもたちと遊んでいることについて、幾つか質問をしてみました。

「ダリアス(一番、仲が良い子)って何人?」

「知らない」

「多分、ウクライナだと思うんだけど…。ウクライナっ知ってる?」

「知らないけど、あいつね、すぐ挫けるんだよ。笑っちゃうよ。」

「じゃ、ムスタファは何人?」

「知らない」

「多分、シリアかトルコかモロッコだよ」

「ムスタファは大仏みたいだよ」

という感じで、彼らが何人かどうか?というのは長男にとっては、全く関係ないのです。というより、まだ地理的な知識や、それぞれの国の歴史、日本との関係などが全く分かっていないので、非常にピュアな「子ども同志の付き合い」をしています。

これは当たり前だと思うし、こういう関係が子どもの時に出来て、そのまま大人になるまで関係が繋がっていると、これは素晴らしい繋がりになるだろうな、と思うのです。で、今回はこのこと自体は置いておいて、ちょっと別の側面から見てみます。

この長男の態度を見ていて思ったのが、「物事について知らないと、好奇心すら湧かない、興味を持てない、つまり質問ができないのだな」と感じました。

要は、何でも良いのですが、長男がウクライナのことを少しでも知っていたら、「シェフチェンコ(ウクライナの英雄と言われたサッカーの大選手。ミランのFWとしても大活躍)って今、何してるの?ゴルフの選手になったんでしょう?」とか、「やっぱ美人が多い?お前のママはどう?」とか質問ができて、そこから、さらに新しい知識や興味が広がっていくでしょうし、ムスタファがシリアから来た子だとしたら、「シリアの治安、マジでやばい?」と聞けるし、「世界平和度161位だけど、大変?」とか、興味のあることが山ほどでてくると思うのです。

これは、ちょっと大人視点からの質問例ですが、もちろん、子どもならではの興味の持ち方でいいのです。

イアン・レズリー著/須川綾子訳の『子どもは40000回質問する』(2016 光文社)には、「知識こそが、好奇心を持続させる力」と書かれており、時に詰め込みだろうと、なんであろうと、ある程度の知識を身につけないと、好奇心を持つことさえできない。好奇心を持つためにもある程度の、いや、かなりの知識を身につけることこそ絶対に必要だ、書かれているではないですか。

<好奇心というのは理論を説いたからといって養えるものでも教えられるものでもない。好奇心は知識を吸収することで押し殺されるのではなく、それによって成り立っているのだ。子どもにとっては、あるテーマについて思考をめぐらせるのに必要な基本的情報がないかぎり、気まぐれな好奇心(拡散的好奇心)へと発展させることは難しい。-(略)-サー・ケン・ロビンソンは、子どもたちが学習意欲を失い始めるのは教育を受ける年齢からだと主張するが、その認識はまったく正しくない。好奇心が失われるのは、親や教師から知識を与えられないときだ。ほんの少しの興味が湧いても、十分な背景知識がなければ「自分には向いていない」と思い、投げ出してしまう。知識こそが、好奇心を持続させる力なのである。>

個人的には「(詰め込みで身につける)知識」こそが、子どもの「創造性を破壊する」という、サー・ケン・ロビンソンのTEDや著書に、感動してそれを信じていたのですが、どうも違う、というのです。

■知識こそが、創造性と好奇心の源泉

みなさんもご存知でしょうか。再生回数1000万回を超える超人気スピーチ、サー・ケン・ロビンソンのTED「Do Schools Kill Creativity?」。このブログでも、『問題児は「問題」を出してくれる子ども?問題児こそ個性的に育つ』というエントリーの中で、触れています。(よく見たら、この動画、すでに10年前のものでした)

ざっくりと要約すると、「どんな子どもでも天賦の才とでも言うべき、もともと持っている才能がある。本来は、それを引き出すことがこそが教育であって、今の学校教育のように知識を(強制的に)与えることは教育ではない。子どもの創造力は現代の教育で殺されている。」というものです。

これを聞いて、今まで、本当に「そうそう、その通り」と思っていました。実際、多くの(本書によると)「進歩的な教育の専門家は、既存の知識を敵とみなす」と書かれています。

しかし「創造性とは空白から生まれるわけではない」として、以下のように書かれています。

<優れたイノベーターや芸術家は膨大な知識を蓄えていて、必要な情報を無意識に引き出すことができる。それぞれの分野の法則を熟知しているからこそ、それを書き換えることに集中できるのだ。彼らはアイディアや主題を何度も混ぜ合わせ、そこから類推を働かせ、変わったパターンに目を留め、ようやく独創的な飛躍に至るのである>

これを読むと、例えば「鎌倉幕府3代目将軍は、源頼朝と北条政子の4男で、12歳で征夷大将軍になった源実朝」とか、「有数関数の積分公式」など、自分が受けてきた日本の教育も、実は意味があったのか、と本当に生まれて初めて思ったのです。

つまり、「知識」というベースがないと、「創造力が発揮できない!」というのです。

ライフネット生命の出口治明さん、世界的投資家のジム・ロジャースは、繰り返し「歴史を勉強しなさい」、「歴史から学びなさい」と言ってます。

こうしたことが、恥ずかしながら今更、腑に落ちた気分であります。

ということで、5年も大学いたので、ますます、もっと勉強しておけば良かった!と後悔した次第です。

そういえば、先日、オランダ国立美術館で、レンブラントの「夜警」を見てきました。事前に、美術に詳しい方から、その画の時代背景などを聞いてから見に行ったのですが、それだけで、見るポイントや見方が変わることを実感しました。そして、あの画に感動したのです。

つまり、知識があると、こういうことになるんですよね。

これを読まれてる、パパさん、ママさん、お子さんにはがっつり勉強させてください。うちも、今日からスパルタになりますよー!www

Thomas