最後の5秒で逆転されるまで、とにかく頑張ったサッカーW杯日本代表の試合で興奮して寝れません。こちらオランダでも、日本代表の活躍は少しづつ知られてきており、オランダ人もみんな「よく頑張ったね!」と言ってくれます。

なんせオランダは今回のW杯には出れない上に、隣国ベルギーの強さも十分知っていますので、オランダ人にとっては、それはそれは日本の活躍がミラクルに見えるわけです。

で、今回はW杯絡みで、子どものサッカークラブの話です。

 

■「教えない」サッカークラブ

6月には、ほとんどのクラブが今シーズンの活動を終了して、夏休みに入っています。(プロのシーズンと全く同じ)

ということで、長男も初めてのシーズンを無事に終えました。最後には地域のトーナメントで優勝したり、本人もクラブ内では一応、セレクションされて来シーズン、上のクラブへの挑戦権も得たりしました。(結局、全く歯が立たず現チームに残留することになったのですが)

プロだと、今シーズン活躍した選手がさらなる活躍の地を求めてビッグクラブに移籍する、なんてことが毎年ありますが、実はこれ、子どものクラブでも同じなのです。

で、そんな環境にいるので、オランダのサッカーの練習はとっても効果的で、日本ではやらない、トッププロ並みの最新の練習があるのではないか?とか思うかも知れませんが…。(何を隠そう、自分もそう思っていた)全くそんなことはない、というのが分かったシーズンでもありました。

というのは、オランダのクラブの練習は全く教えません。本当に教えません。そもそも試合ばっかりやっていて、日本式なテクニックトレーニングや、コーチが大声で指導する、なんてことは皆無です。

さらに言うと、日本の同い年の子どもたちに比べると練習量も圧倒的な少なさ。これで良くヨーロッパのサッカーの強豪国になっているなあと関心するほどです。

完全に素人目ではありますが、オランダと比べるとおそらく小学校サッカーは日本の方が圧倒的に強いと思います。

以前、このブログにも書いたと思いますが、今シーズンはひょんなことから、子どものサッカークラブのトレーナーをすることになったのですが、なんとかシーズンを終えられたのも、この全く教えない方式だったこともあります。(注意:当方、スポーツとしてのサッカー経験はほとんどなく、サッカーは見るだけ&TVゲーム専門です)

 

■動き方が分からない子どもたち

さて練習しても、さして教えないのですから、当然ですが試合になると、子どもたちは「どう動いて良いのか分からない」状態。特にシーズン初期の頃は全く動けません。サッカーは試合になると、技術もさることながら、フィールド内における動き方、ポジションの取り方なんかが大事になります。(と思います。素人です。はい。すいません。)

でも教えない。サッカークラブに入っているのに、誰も教えてくれません。そうすると、どうなるのか?

子どもたちが自分たちで考えるようになります。少しづつ少しづつですが、自分で考えるようになります。誰だって試合に負けるのは嫌ですからね。

うちの長男も(そして自分も)、だんだんとプロの試合を選手の目で見るようになってきて、動き方などを見るようになってきました。もちろん、まだ小さいので、ちゃんとプロのように見れるわけではありません。試合の途中で飽きて、どっかに行っちゃうなんてことも多くあります。

でも、本当に少しづつですが、自分で考えるようになってきています。それはゲーム中の動き方だけではなく、練習の仕方とか、ボールの扱い方とか。とにかく色々と考えるようになってきています。

おそらくオランダのサッカークラブの狙いはここにあります。自分で楽しむために「考える」こと。これをもっとも大事にしているような気がします。

実際に上手い子もいて、おそらく自分で練習もしているし、動き方などもいろいろと見て、考えていると思います。「教えられなくても、自分で考えて動く」。ここが日本との決定的な差だと思います。

だから本当に小学生のサッカークラブなんか、みんな下手だし、日本の方が絶対にうまいと思います。でも、どんなに時間がかかっても、自分で「考える」ことをしている子どもたちは、あとで伸びてくるのか?と思います。ヨーロッパのサッカーが強いのは、この「教えないこと」に秘密があるのではないか?と思います。

 

■動けない中国のプロ

で、これはオランダのママさんに聞いた話。

「中国がサッカーに力を入れたい」ということで、ヨーロッパからコーチを招聘して、中国のサッカーの強化を図ろうとしているようです。

そこでそのことをオランダのTV番組で取りあげて、あるジャーナリストが取材に中国に行ったようです。取材に行ったジャーナリストが驚いたのは、中国の選手が、コーチの指示がないと全く動けない、ということでした。

結局、その番組ではヨーロッパとアジア(中国)との差は、体力とか、身体能力の差ではなく、「指示がないと動けない選手」と、「自分で考えて動ける選手」との違いであると結論付けたようです。

サッカーというのは、コーチの指示を受けて動くのではなく、自分で考えて動くもの、と当然のように思っていたオランダ人ジャーナリストには、この実態がショックだったようです。

人に教えられて動くのではなく、自分で気づいて、考えて、動くことがいかに大切か?ということなのです。

 

最後に、最近FBで回ってきたデンマークサッカー協会の10ケ条というのもがあります。ご覧になった方も多いかと思います。これなんかを見ると、オランダも全く一緒だな、と感じました。

2018年のW杯は、オランダは出場すらできませんでしたが、デンマークは日本と同じく決勝トーナメントの初戦敗退でした。

この結果だけ見るとどっちがいいのか?というのは難しいのですが、これ、サッカーの教え方の話だけではないのでは?と感じるのは、自分だけでしょうか。子どもに対する考え方の違い、みたいなものを感じます。

それと、オランダのサッカーは練習時間が異様に短いのも衝撃でした。で、これももしかして、働き方の話と一緒なのか?とか思ったり。

ということで、なんとか自分の1年間のエセトレーナーも終了しました。教えないクラブで、よかったです。笑。

最後にデンマークの少年指導10ケ条を。

<デンマークサッカー協会 少年指導10ヵ条>
  1. 子どもたちはあなたのモノではない。
  2. 子どもたちはサッカーに夢中だ。
  3. 子どもたちはあなたとともにサッカー人生を歩んでいる。
  4. 子どもたちから求められることはあってもあなたから求めてはいけない。
  5. あなたの欲望を子どもたちを介して満たしてはならない。
  6. アドバイスはしてもあなたの考えを押し付けてはいけない。
  7. 子どもの体を守ること。しかし子どもたちの魂まで踏み込んではいけない。
  8. コーチは子どもの心になること。しかし子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない。
  9. コーチが子どもたちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ。
  10. コーチは子どもを教え導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子どもたち自身だ。