「合格」か?「当選」か?子どもの将来の決め方から見えてくる日蘭社会の違い
日本では、まさに新学期のシーズンですね。ちょっとソワソワした、あの感じを懐かしく思い出します。あ、大人でも新社会人になったり転職があったり、新部署への異動があったりと、みんながソワソワしている感じでしょうか?
オランダ(EU)では、今はまだシーズン真っ只中。夏時間になり、そろそろ暖かくなるかな〜?なって欲しいな。夏へ向けて、そろそろシーズンも終盤(6月、7月あたりがシーズン修了)になってきた〜という時期。ついでにいうと、これから夏に向けて、毎月のように連休があるタイミングですw
こんなタイミングなので、徐々に来シーズンの準備が始まっています。それは子どもたちの学校も同じ。ということで、小学校を卒業する子たちには、このタイミングで中等学校が決まります。日本的に言うと「お受験」でしょうか? その合格発表がこのタイミングなのです。ここだけ見ると、日本からちょっと遅れての「サクラサク」タイミングなのです。
と言うことで、今シーズンで小学校を卒業する我が家の長男も「お受験」でした。このオランダ的「お受験」。実はオランダ教育の中でも、かなり問題があると指摘されているものです。というのは、ざっくりと言うと12歳を迎えるこのタイミングで「将来の進路を決める」と言うことになるからです。「え?小学校卒業のタイミングで将来の進路が決まるの?」と言うのは、「子どもが世界一幸せの国」と言われるオランダにおいて、そして近年は学歴重視の世界において、特に教育移住組の日本人からは「最大の問題」と指摘されている点でもあります。
今回は、その実態をご紹介しつつ、日本とオランダの社会の違いについてお伝えします。
お受験、実は抽選
この話をするために、超簡単にオランダの教育システムをご紹介します。実態は、めっちゃ複雑なので。オランダの場合、小学校(8年)を卒業した後は中等教育に進みますが、これは分類によって在籍年数が変わってきます。詳細はぶっ飛ばすと、在籍期間は分類によって6年の学校、5年の学校、そして4年の学校と言う3つから選びます。その中にも、それぞれ細かなコース設定があったり、途中で変更できたり、分岐したり…、とにかくかなり複雑なので、繰り返しますが詳細はぶっ飛ばします。
(くれぐれも詳細は鵜呑みにしないでください。ご興味ある方はご自分で調べてください。学校の仕組みの詳細をお伝えすることが本エントリーの目的ではないので、かなり省略します。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、こういう点、必ずクレームが入ってくるので前もって、注意書きをくどくどと書いてます。あ、ちなみに本ブログを読んでくれている方は、かなりリテラシーの高い方が多いようで、ありがたいことに、あんまりこう言うことにクレームは入ってきませんが、これがYahooとかに転載されて、普段読んでいない方の目に触れた日には大変なことになりますw)
で、なんで在籍年数が違うかと言うと、子どもたちのその先に直結しています。つまり、できるだけ長く勉強して学問(大学)の道に進むコース。短めに勉強して社会(職人とか)にいち早く出るコース、というような分け方です。
日本だと、小学校6年、中学校3年、高校3年、大学4年(その他)みたいなコースが一般的だとすると、オランダの場合、すでに何が一般的か?分かりません。面白いのは、人によっては「6割くらいが4年コースに進むよ」という人がいたり、「いやいや4年コースが普通(8割?)でしょ?」という人、「なんだかんだで半分は5,6年コースじゃない?」とか、かなりめちゃくちゃ。統計的にも地域差があったりで、よう分かりません。途中でコースを変わる子もいるし。
一つ言えるのは小学校卒業タイミングで、これらの中等教育のコースを選ばないといけないこと。そして、その選んだコースによって大まかに将来の進路の幅が決まることです。オランダの場合は小学校までは宿題も一切なく、休みも多いし、すごーく楽。子どもにとって天国です。が、中等教育になったとたん、ガラッと変わります。進級、卒業できない子も多いです。ギャップが激しすぎるという意見もありますが、とにかく天国は小学校で終わりますw 天国卒業と同時に、世知辛い現実にガツっと向き合うことになるのです。
中等教育のコース選択は、小学校での成績をベースに本人、親、小学校の先生と相談して決めます。もちろん、ここにも色々な問題が存在します。より長いコースに行かせたいので期待を持って我が子を見る親と、現実を知っておりそれをシビアに見る先生との意見が違うとか、人間なので、「贔屓」とか「好き嫌い」とか「合う合わない」みたいなことが影響したり…。
まあ、こんな人間らしい問題を含みつつも、なんとかコースを選択して合意に至った、次の問題が抽選です。
この抽選、エリアにより、年により、学校により、違います。要は応募が殺到する学校は抽選。あんまり人気のない学校は希望すれば、そのまますんなり入れる、とか。これもエリアによって違うので、一概には言えません。
うちの例で言うと、本人の実力?、親の希望、そして先生の見立てが合致して、とりあえず希望のコースはすんなり決定。コースを決定した上で、今度は学校選びとなりました。当然ですが、各進学コースには複数の学校があるからです。
実は予習として、希望進学コースの学校は昨年から見学とかしていたのですが(ギリギリのギリ、コロナ前だった)今年はコロナの関係でオンライン説明会ばかりでした。こんな環境の中、とりあえず希望校へ入学希望を提出。近いと言うこともあり、うちの近所では大人気の学校です。この時点では「今年は抽選がないようにしたい。できるだけみんなを受け入れたい」と言う学校側の説明だけしか分からずでした。が、本人が「近いし、どうしてもここがいい」と言うことで、抽選覚悟(しつつ抽選ないといいなあ、と言う淡い期待を持ちながら)で希望を提出しました。
そうなのです。ここでは分かりやすいイメージを持ってもらうために日本の中学校受験とかけて「お受験」と表現しましたが、なんのことはない、これはただの「抽選」なのです。そして、結果的に我が家の長男は「抽選」に「当選」しました。つまり希望校に合格?したのです。結果的に「お受験」と言う「抽選」に「受かった」のではなく、「当選」して。
学歴社会はオランダにも
先にも書いたように、ここで進学する中学校のコースによって、大学に行く行かない、職人になるなるならない、なんてことが大体、決まっていきます。よくオランダの教育が問題と指摘されるのは「この時点で将来を決める」ということです。確かに、自分を振り返っても、小学校卒業の時点で将来の方向性を決めるのは、かなり酷ではあると思います。いくらオランダの社会が教育と繋がっていると言っても。
ちなみに、自分は小学校の卒業文春ではなく、卒業文集には「釣具屋になりたい」と書いた気がします。(自分なりに、進学する公立中学に野球部がないということが分かって、目指していたプロ野球選手の夢を絶たれた後に、失意に満ちて書いた記憶ありw)なかなか小学校卒業時に、将来の可能性を(ドラスティックに)狭めることが問題だと指摘されています。
例えば、大器晩成型の子どももたくさんいますし、心機一転、なんかもあるでしょうし。。。
あ、もちろん中等教育中でのコース変更の制度も存在はしています。が、「小学校卒業時に将来を決める一歩を踏み出す」ことには変わりなく、近年、ますます学歴重視になっているオランダでも問題視されていますし、教育を非常に大事にする一般的な日本人ママなんかからして見たら発狂寸前(失礼…w)のシステムなのです。
で、ここに近年の大都市では「抽選」制度が導入されているのですから、「人の将来を抽選で決めるのか?」という問題も相まって、大問題化しているのです。あ、もっとも、この抽選制度はオランダでも大都市特有のものです。厳密に言うと全国で行われているものではありません。
これらはオランダの社会の成り立ちや、ヨーロッパの職業組合の歴史、オランダは(特に表立って)階層がないと言いつつ、階層社会が存在していること、近年の世界的学歴重視の傾向、そして都市問題なんかと繋がっていると思います。なので、特に教育制度だけを見て、「小学校卒業時に進路を決めるなんて問題だ!」とか、「しかもそれが抽選かよ!」って、怒っている人がいますが、ここだけ見てるだけでは問題の本質が違うので、解決できないと思っています。
一方で、子どもが小学校時代に塾とか、自宅学習をして、学校の成績だけを良くして、「一番上のコースに行けるようにしてあげたわよ」と言う日本人ママもたまにいます。
とまあ、ここでも結局、教育は社会に繋がっていると言うことを感じさせる制度ではあります。そして、この進学にも「兄弟枠」なるものがありますので、我が家の小1の弟は、自動的にお兄ちゃんの学校には行けることになりました。抽選なしで。(もっともお兄ちゃんのコース(レベル)に到達すれば、の話ですが)
受験の準備0
まあ、こんな問題があることはあるのですが、実際にこちらでいわゆる「受験」(抽選?)の準備は0です。
今、自分が運営しているセレンディップなるオンラインのスポーツ&アートスクールがあるのですが、「お受験の準備のためにクラブを辞めます。でも、一人で練習続けたいのでセレンディップに入ります」というお子さんがいます。こちらは、そういう使い方を想定していなかったので最初はびっくりしたのですが、日本の受験事情を考えると、確かにそれはいい使い方だなと思っています。そこで感じるのは、やっぱり「受験」の大変さです。
オランダはそう言う意味では「受験」はないので、やっぱり日本と比べるとかなり伸び伸びです。中等教育でも、さまざまな問題があるとは思いますが、それはどこでも同じ。中等教育の次に、大学に行くとしたら、これまた行きたいところを自分で選んで行くだけです。(卒業できるか?とか進学できるか?と言う問題は置いておいて)つまり、自分で全部決めて行けばいいのです。なので、うちは「受験」を一度もしてないにもかかわらず、今後もおそらく「受験」とは縁がなさそうです。
今回は、抽選があるのかないのか?も分からなかったので、かなりドキドキでした。また、周りでは抽選に漏れてしまった子も当然いますので、なかなか複雑です。こうしたことが、オランダの教育の最大の問題と言われていることだったりします。日本とは問題がちょっと違いますよね。
唐突ですが、個人的には数年以内に、「サラリーマン」と言う職業がなくなるのではないか?と思っているのですが、そう考えると「学歴」が、そもそもなんのために必要だろうか?と思ったりします。現に、うちの会社では採用時に学歴完全不問です。(むしろ、人と違う方がいいとさえ思っています)
と言うことでとにかく、親としては好きな学校に行って好きなことを見つけて、そこに没頭してほしいなあと思っています。
何度も書いているように、「大人になった時の楽しみを見つけることが学校の役割」と、うちの小学校の校長先生が言っていますが、結局、オランダの学校システムはそう言うことなんだな、と実感した次第です。
それにしても、うちの次男、ラッキーすぎるw
先日、日本の友人とラインをしていて、(この状況下で次男の就職活動でまだ内定が取れず、本人はノイローズ気味)という話を聞いて。
可哀想と思う一方で、大学行って、卒業したらサラリーマンになるのかあ。。。。と、いうことに愕然とした、日本の常識が抜けた私です。うちの娘はさ来年、(イギリス系の)中等教育に進むのですが、昨日の夕飯の時の会話。将来はフランスに行きたい、と。なんでフランス!? まあ、こういうのを面白がっちゃうのですが、うちの子供も受験はないものの、目の前の勉強をコツコツ、コツコツと積上げる日々です。長男さん、進級おめでとうございます!
コメントありがとうございます! フランス!いいですね〜。うちは、「いかに人と違うことをするか?」ということを推奨してますので、その観点からは(&いただいたコメントからは、英国在住の日系人でフランスに!ということだとすると)すでにかなりマイナー人材なので、素晴らしい!と思います。 将来が楽しみですね! あ、ちなみに「日本のサラリーマン」という職種は、近い将来なくなるのでは…なんて思っています。