またしても先週日本に一時帰国していました。今回の帰国中に、「オランダチーズの会」なる、オランダのチーズを持って帰るので、一緒に飲みましょうと言う会を行いました。この会の特徴は参加者にママさんが多いこと。

そう、結構こう見えてもママさんにモテるんです…と言う訳では当然なくて、お子さんの教育とか子育てに興味があるママさんが、ちょっと「オランダの子育てとかどうなのかな?」とか、「教育について話を聞いてみたい」というパターンが多いからだと思います。

と言っても、今回は自分の体調があまりよくなかったので、みなさんとちゃんと話ができませんでした。と言うこともあり改めて、なぜ「オランダの教育を知っておいた方が良いのか?」ということを。

 

■日本の学力、実は世界トップクラス

みなさんのお子さんが、今、学校で何をどのように習っているか、勉強しているか?はご存知でしょうか?ザックリ言うと、パパやママ、つまりみなさんが学校で習ったことと大体同じことを、大体同じような方法で学んでいるのではないでしょうか?それを知ると、ちょっとホッとする人もいるのではないでしょうか?だってあなたが子どもの頃にやったことを、やっているのですから。

同じことをやっていれば程度の差こそあれ、パパとママとだいたい同じように仕事もできるようになって、だいたい同じように幸せになれて、これからの将来に少しの不安があっても、だいたい何とか自分で生きていけるようになれる。だから親としては、親と同じような勉強をしっかりやっていてくれたら安心?できるのではないでしょうか。

ちなみに、実際に日本の学力は世界でもかなり上位です。

OECDが実施している学習到達度調査「PISA」というものがあります。2015年に72か国・地域の15歳約54万人を対象に実施したもので、平均得点でみた日本のランクは科学的リテラシーが2位、数学的リテラシーが5位であり、ともにOECD加盟国の中ではトップであるとともに、前回2012年調査のランクを上回り、トップレベルの水準を維持。さらに読解力は8位(OECD加盟国の中では6位)。ハッキリって世界的にみたら、これは非常に高い学力なのです。ちなみに2018年実施のPISAには日本は参加しませんでしたが。(PISAは3年おきに行われており、次回の2021年は日本も参加する見込みです)

このように世界的に見ても高学力国家であることに間違いないでしょう。ただし、ちょっと気になるデータもあります。それは世界の大学ランキングです。いろいろな指標があり、多くのランキングがあるので、個別のランキングを取り上げることはしませんが、大きな傾向としては上位は米国、英国の大学が独占。近年ではアジアのトップは中国やシンガポールの大学。日本のトップランクの大学は、これらからずっと下がってランクイン、と言うような傾向が続いています。つまり日本の大学はすでに世界のトップランクではないのです。

 

■子育ての目標は何か?

さて、オランダとの違いを結論から言ってしまうと(と言っても個人的な見立てですが)実は子育ての目的が日本とは違うからかな?と思っています。

子育てというと、もちろん教育と切っても切れないものだと思うので、こうした大学のランキングのことを気にしている親御さんも多いと思います。でもまさに親御さんである、あなたがそうであるように、学校を卒業してからの人生の方が長く、苦労も多いのではないでしょうか? 学校を卒業してから、どうやって自分で生きていくのか?どうやって幸せな生き方を実現していくのか?こうしたことの方が、どんな学校に入るのか?ということもよりも大事ではないでしょうか? 

となると子育ての目標が変わってきませんか? つまりどんないい学校に入るのか?どれだけ良い成績を残すのか?といった類のことはあまり関係なくなりませんか?

いやいや良い成績を残して、良い学校を出ることこそが、その後の良い人生歩むのに必要なことである。そう思われる人もいるでしょう。実際、筆者もそう思って生きてきました。ところが日本を出て世界で住んでみると、日本での学歴とかはほとんど、いや全く関係ないのではないか?と思うようになりました。

ついでに、そして語弊を恐れずに言うと、今、世界レベルで活躍している日本の企業も正直あまりありません。かつて世界で大活躍していた日本の企業の姿は今ではほとんど見ることができません。でも、これが大学ランキングとかよりも実は大問題だと思っています。

もちろん誤解のないように言っておきますが、世界で活躍している日本人は今でもたくさんいると思います。スポーツ界でも、実業界でも、社会活動においても、ありとあらゆる分野で世界で活躍している日本人は多くいます。

しかしかつて日本人が世界に誇っていた、そしてみんなが憧れて、目標にでもしていた企業が、今はないのです。(分かりやすくするために極端に言っているので、誤解のないように)

でも「良い子育て」というものがあるとしたら、それが良い学校に入って、良い成績を収めることや、良い会社に入ることだけを目的としていた時代は、とっくに終わっているのではないでしょうか。良い成績を評価してくれる良い会社って今、日本にあるんでしょうか?ということなのです。

もちろん子育ての目的が、それだけではないことはみなさん百も承知だと思います。であれば、さっさと目を世界に向けてください。グローバル社会とか、もう20年以上前から言われていますよね。子育ても、とっくにそういう方向にシフトしないと手遅れになってしまいます。だって、社会はもう完全にグローバル化しているからです。

「日本にいるので、オランダの子育てがなぜ必要なのか分からない」これは確かにそうでしょう。逆に言うとオランダである必要は全くないかもしれません。イタリアでも、マレーシアでも、米国でも良いかもしれません。

ただ親である我々が忘れていけないのは、そして知っておかなければならないのは、世界は猛烈なスピードで動いている、と言うことです。つまり我々が20,30年前に習った知識や、学習だけでは全く足りない、ということなのです。全く役に立たないかもしれません。だって世界が全く変わってしまっているからです。最近は特に加速度的に変わっていますよね。

そして、こうした「動き」と言うか「波」は、島国という日本にいても勝手に押し寄せてくるのです。「自分(の子ども)は、が日本から出ないから関係ないもん!」は通用しません。例えば今回の帰国でも感じたのですが、コンビニの外人店員の多さです。彼らは母国語+英語+日本語が喋れたりして、今ではまだ日本人より時給が安いかもしれませんが、語学だけみても日本語しか喋れない人よりもグローバルでは通用します。

こういう人たちが、あなたのお子さんの就職活動ではライバルになるかもしれないのです。例えばオランダのうちの会社で雇うとしたら、いろんな語学が喋れる人を採用します。日本語しか喋れない人は、採用しないか、おそらくすごい安い給料でしか雇えません。

これは一例として語学の話ですが、もう日本の基準だけで学んでいたら手遅れになるかもしれません。(ちなみに語学の話は子育てとか、教育の本質の話ではありません)

 

■子どもは未来を生きている

さらにもう一点、大事なのは子どもは未来を生きている、と言うことです。これから10年後、20年後に大人になるのです。未来を生きる子どもに、過去を生きてきた大人の常識はもはや必要ないかもしれません。

と考えると、日本で生きているからと言って日本での子育てだけを考えていては、グローバルになるチャンスをミスミス逸しているようでもったいなすぎるのです。せっかくこんなグローバルな時代です。どんどん良いことは取り入れて、少なくとも知識は得て、子ども自身が自分で取捨選択できるようにしませんか?

だって、未来に出ていく自分のお子さんの周りは、こういうグローバルな環境で育ってきた仲間になるはずなのです。もちろん、そうした仲間の内に日本の子育て環境で育ってきた、あなたのお子さんがいるのも素敵なことです。でも海外の子育てを知っていたら、子どもにとっても親であるあなたにとっても、ちょっと世界が広がったり、ちょっと未来を生きることになったりすると思いませんか?何も全てを取り入れる必要はないし、日本式の子育てを捨てる必要も全くありません。

ただ、世界が急速に変わってきているこの時代に、そこに合わせられる選択肢としていろいろな子育てを知っておくのは決してマイナスではないと思います。繰り返しますが、世界の変化のスピードは想像を絶するほど早いのです。そして、我々は実はその真っ只中にいるのです。

 

時代はどんどん変わっているので「今までと違う」ことを恐れずに、親である我々は、貪欲に色々な世界を見てください。そのうちの一つに「子どもが世界一幸せな国」と言われるオランダの子育てがあっても良いかな?と思う次第です。

一つだけ具体的なことをあげるとすると、日本の教育はAIが得意とする分野と被っているのが致命的ではないか?と気になっています。

と言うことで、このブログをベースに「世界一子どもが幸せな国」と言われているオランダの子育てをできるだけ日本で実践できる形にして、ご紹介していく本がディスカバリー21さんから出版されることになりました。

ちなみに教育の専門家でもなんでもない自分が書く意味は「社会を知っている」と言うことかな?と思っています。もちろん、知らないことの方が多いのは言うまでもないのですが、オランダでは「先生が一番社会を知らない」と言う前提で学校の教育プログラムを作っています。なので同じような前提で、先生では逆に書けないこと、を目標にしています。

未来を生きるお子さんのために、そしてあなた自身のために。とか言って、無事に書けるか分かりませんが…。