ご存知の方も多いと思いますが、残念なことに最近ヨーロッパでのサッカーの試合において、人種差別的なヤジが頻発しています。

プロリーグとしてレベルが非常に高く、人気のあるイタリア、イングランド、スペイン、ドイツなどでも多発しています。そしてその度にプロの選手が抗議をしたり、世論としても「こういうことはやってはいけない」と盛り上がります。

最近では各サッカーリーグも、いわゆる人種差別的なヤジ、つまりレイシズムと認められた場合、試合を中断する、中止にするとしています。

さて、オランダは古くから移民が移り住み、オープンに他者を受け入れる土壌があり、今のところテロもないということから、個人的にはこうしたレイシズムとは無縁ではないか?と思っていました。もちろん、数年前から反イスラム系の政党が躍進していたり、それこそ脱EUを掲げる政党が躍進するという状況もありましたし、少し昔を翻ればイスラム教の信者が映画監督を刺殺するという事件もありましたが…。

ところが、ごく最近行われたオランダのサッカープロリーグでも、このレイシムスが起こったのです。

 

レイシズムはどこにでも存在する?

さて、オランダには近年、一つ前のエントリ(「オランダのシンタクロースに見る「子どもが社会の真ん中にいる」ということ」)で少しだけ触れたシンタクラースのお付きのピートの人種を巡る問題があります。

簡単に言うと、お付きのピートはもともと黒人なのですが、(なので、それを模して、みんな顔を真っ黒に塗っていた)それが人種差別に当たるということで、反対派が大抗議をしています。そうしたこともあり、今ではお付きのピートは暖炉の煙突の煤で顔が汚れたという設定になっていて、顔を黒くはしているものの完全に真っ黒に塗るのではなく、黒く汚れた状態になっています。(こちらのグループは、レイシズムは良くない!というグループです)

でも、これに対して歴史的にピートは黒であって人種差別とかの問題ではないと主張するグループもいて、両者の対立もめちゃくちゃ激しくなっています。(おそらく、こちらもレイシズムが良い!ということを言っているのではないと思います)

いずれにせよこのピートの問題は、子どものファンタジーをみんなで作る、という雰囲気そっちのけでガチの対立や抗議をしており、そのこと自体に嫌悪感を示している人も多くなっています。

まあ、ともあれオランダにも、こうしたレイシズムはナーバスでデリケートな問題として存在しているということなのです。

で、そのレイシズムの問題が、オランダのプロサッカーリーグで表出したのです。黒人選手に対してのヤジで、シンタの時期でもあったため、中にはまさに「ピート」というヤジもあったようです。

 

オランダの対応は迅速だった

さてこのヤジがあった試合はその瞬間に選手が抗議した結果、即座に中断されました。(中断後再開)そして、警察はこのヤジを行った人物を映像から特定するとしています。最近、他のリーグでもレイシズム系のヤジやブーイングが増えているように思いますが、中断した、というのはまだ聞いたことがありません。(これは、自分が知らないだけかもしれません)

さらに、この事件があった週にサッカーのオランダ代表の試合がありました。そのオランダ代表の試合においては、選手(オランダサッカー協会)がレイシズムに対しての抗議を明確に発信しました。(実際に、今のオランダ代表には黒人の中心選手もいます)

そして、さらにさらにそれを受けて今週末のことですが、オランダサッカー協会からの連絡を受けてオランダ各地で行われる全ての子どもの試合で、こうしたレイシズム反対の姿勢を明確にしました。

そして、このことが子ども向けのニュースで放送されていました。

もちろん残念ながら、だからと言ってレイシズムがなくなるとは思いませんが、ここまでの国をあげての対応は驚くべき早さです。日本でも数年前(いや今も)、ヘイトスピーチやレイシズム的な言動がたびたび問題になります。それに対して反対を表明するような具体的なアクションを国全体でやっているという記憶はありません。もちろん、個別には多くの反対活動はあると思いますが…。

ご存知のように、第二次大戦時のナチスの歴史があることもあり、ヨーロッパではレイシズムには非常に敏感です。にも関わらず繰り返し起こる問題でもあり、現代でもいたるところにも存在している問題だと思います。

 

さて、このようなオランダの一連の対応を通して感じるのは、こうしたことも子育てしやすい環境を作っている要因なのだな、ということです。前回の記事のような、子どもの夢を壊さないために国全体で子どもを騙すwという取り組みも良いのですが、レイシズムへの毅然とした迅速な対応は、やはり安心感、信頼感が生まれます。こういう環境で子育てができるのも、良いところの一つかもしれません。

海外に住んでいる身としては、レイシズムの対象にされるかもしれないという立場でもあるわけですからね。

直接、子育てに関係する話ではないかもしれませんが、こういう環境にいることは、とても大事だと思います。もし海外移住や、お子さんを留学させることなどを、お考えでしたら、こういうところもちょっと見てみてください。住みやすさ、生活のしやすさって、意外とこういうところで決まったりしますからね。

ほら、いくら大学のレベルが世界一と言っても、なんとなく銃規制のされていないアメリカに自分の子どもを留学させたくない、っていう感覚ないですか?こういうところ、親として考えるとほんと大事なんですよね。