今年の夏は、世界中が不思議な夏を迎えていると思います。

コロナは第二波なのか?ヨーロッパでもいくつかの地域では旅行が制限されるエリアが再び出てきていますが、オランダでは例年と変わらずガッツリ普通に夏休み中。バケーションに出かけるオランダ人が多い中、我が家はギリギリまで迷ったヨーロッパ旅行を今年はキャンセル。おかげでポッカリと空いた期間、普通に仕事をする夏休みが始まりました。

日本でも日に日に感染者が増えているようですが、夏休みも大幅に短縮されている学校が多いと聞きました。

 

夏休みは自ら育つ期間?

こちらの夏休みは、もともと宿題もないし、本当にポッカリと何もしない時間になります。だいたいは、何もしないキャンプに家族ででかけます。

何もしないことをオランダでは「ニクセン」と言いまして、オランダ在住のライター山本直子さんの著書「週末は、Niksen。」に詳しく書かれています。ということで、今年の夏休み、我が家の子どもたちは、ずーっとニクセン。毎日ニクセン。寝ても覚めてもニクセン。ということで、ニクセンにご興味ある方はぜひ。

で、親としては、この何もしない期間がもったいない!と感じるのですが、子どもにとっては、意外にもこうした期間が大事だったりすると言います。

何度かこちらのブログでも書いていますが、学校を意味するラテン語の「エコール」は、もともとは「暇」という意味。元京都大学名誉教授の、故河合隼雄先生は「子どもと学校」という著書の中で、

<学問というのは暇なときにするものだ、というよりは、暇こそが真の学問を生み出す>

と書かれています。

それも知っている上でも、この何もしない夏休みに、ついつい何かをやらせてようとしてしまう、貧乏性の日本人親な我々は、ガッツリと教え込もうとしてしまうのです。

そこで、同じく河合隼雄先生の『子どもと学校』(岩波新書 1992)より、こんな状態の親に向けて、有用なアドバイスがありましたので引用したいと思います。ちなみに、これは夏休み返上で頑張らなければならない日本の子どもたち&親御さんたちにも、役に立つ話ではないか?と思います。

<教育という字は、「教」と「育」に分けることができる。そして、興味深いことは、育という語は、育てる、育つ、と他動詞にも自動詞にも用いられることである。教育ということには、教育する側と、教育される側とがあり、教育する方から考えると、やはり自分が「教える」と言う行為に重点が置かれ、その後で、「育てる」と言うことが考えられるが、「育つ」となると、これはその本人の自発的なはたらきであるから、教育とは関係がない、あるいは考慮の外にある、ということになりがちである。>

まずはここで、「教える側」から考える教育について書かれています。

<しかし、教育ということを深く考えるならば、そのベースに、教育される側に潜在している自ら「育つ」力ということを無視する事はできないのではなかろうか。教育ということは、これまではどうしても、教育する側の視点から発言されることが多かったので、何を、いかに教えるかに重点がおかれがちで、「育つ」はおろか、「育てる」ことの方さえ、軽視される傾向が強かったのではなかろうか。>

と書かれており、結局、焦って「教える」ことよりも、じっくりと「育つ」ことを待つ方が大事だ、と言われます。

ということで、実はニクセンは、こういう意味でも非常に良いのだ、ということではあるのです。

あるのですが、最近の親や教育界の傾向としては、この真逆、ようはいかに効率よく教え込むか?ということばかりを追求しているように思います。

 

夏休み返上はどうなのか?

それには、技術が発達して、全体の物事の効率が良くなり、いかに短時間で効率よく、膨大なことを処理するのか?処理できるのか?ということだけに価値が置かれている近年の傾向がはっきりと出ていると感じます。

親は、いかに効率よく、失敗なく子育てをするか?ということに関心が行っており、結果、子育ての「How to」が重宝されます。いくら世の中が便利に、高速化して、高効率化が求められても、人間の育つスピードはそんなには進化していないはずです。人の成長には「効率」という概念は当てはまらないのです。

オランダ発のスローメディア「コレスポンデント」のグローバル版(英語)で、こんな記事がありました。英語で書かれたもので、しかも長いのでちょっと読みづらいかと思いますが、すごく良い記事です。Meet the parenting expert who thinks parenting is a terrible invention

How to を初めとする、今の時代の子育てがいかに子どもの成長にとって有害か?ということが書かれています。これ、なんか日本の今の現状を痛烈に皮肉っているような感じもするんですが、世界的な傾向なんですよね。

ここでは、もちろん書かれていませんが、こうやって考えてくると”夏休み返上”ってどうなのかな?と思わざるえません。確か、最近どっかのニュースで、宿題がいかに意味がないか?というリサーチ記事が出ていた気がしますが、もう今年の1年はコロナ渦だったから、しょうがない!いっそ、コロナ禍で世の中がどんなことになったのか、体験できる貴重な年と考えて、学習カリキュラムをきちんと消化することは、諦めてしまえ!っていう訳には…いかないですかね???

留年経験者からすると、1年の留年くらい全く人生には影響ないですよ。とか書くと怒られるかな。カリキュラムをなんとか終わらせようと頑張っている先生たちに。。。あ、そういえばちなみに、浪人もしてたんだった。っていうことで、都合、2年遅れですが、まあ、社会に出て気になることは何一つないです。

 

っていうことで、今年の我が家はひま暇夏休み。自分は目一杯、力一杯仕事。とにかく、もうそろそろコロナは飽きてきましたね。早く治って欲しいっす。でも、オランダはいまだに誰もマスクしてないから、まだましなのかな…。