6488355543_6318064b0a_b前回の『「世界一子どもが幸せな国」オランダの学校を見学して思ったこと』の評判が良く、(というより正確に言うと「続きが読みたい」)「オランダの教育には、そんなに興味ないだろうな…」と思っていたのですが、反響が思った以上に大きくビックリしました。

そこで今回は、学校見学を続けて見えてきたことを記してみます。

 

■見学者をオープンマインドで受け入れるイエナプラン

みなさんは、学校見学をする時、何に一番注目しますでしょうか? 施設、立地、先生の質などんど見るところはいっぱいあると思いますが、個人的に見学のポイントで一番大事にしているのは「生徒」です。

その学校の生徒を見れば、何となく全部が分かるような気がしています。

今回は、Hilversumという小さな街の学校を見に行きました。見学に行った学校は、街の中心からだいぶ離れた、まるで軽井沢の別荘地帯のようなイメージの、大きなお屋敷が並ぶ静かな村の中にありました。

そこはイエナプランの学校で、校長先生がじっくり時間を取ってくれました。

イエナプランの学校では保護者や、地域とのつながりを非常に大事にしており、保護者が見学や面談を頻繁に行ったり、学校の運営にも積極的に関わっていたりする土壌があります。

ですから、だいたいどの学校も、見学を申し出ると非常にオープンマインドで迎え入れてくれます。

今回は40年以上の教師経験のある、おばあちゃん校長先生が迎え入れてくれました。

 

■なぜか泣き出す校長先生と…自分

まずは校長先生との話。なぜわざわざこんな遠くまで見学に来たのか? 学校にあなたは何を求めているのか? 何が大事だと思っているのか? など多くの質問を校長先生からされました。

「自分で考える力」「異なる他者と協働する力」「自分の意見を持って、人に伝えられる力」「正解のない社会を生き抜くための、考え方を教えたり体験出来ること」このようなことがこれからの子どもには大事だと考えている。そしてそれが実践できるのは、イエナプランだと思ったので見学に来た、と伝えました。

すると校長先生は「こんなにイエナプランを理解してくれているあなたが、はるばる遠くまで来てくれて非常に喜しい」と言って半泣きに。ついでに、こちらもなぜか半泣きに。「なんだこの展開…?」状態になりました。(実際、イエナプランの勉強はしていきましたが)

その学校は4年前に建て直した校舎で真新しいのですが、面白いのは、1Fはイエナプラン校(見学に行った学校)、同じ校舎の2Fはダルトン教育の別の学校。

さらに、同名のイエナプラン校が少し離れたところにあり、(運営は別だが)それらを含めて、計20校くらいの学校を経営している別の母体があるとのこと。ファイナンシャル的な問題だと言っていましたが、これは学校経営と実際の運営を切り離して、学校(先生)は生徒に向き合うことだけを仕事にする方法でもあるようです。

オランダ人らしい、非常に合理的な考え方で子どもにとって何が大事か?という観点で、社会が作られている印象を、ここでもしました。

 

■生徒にインタビューしてみた

一通り話をし終わった後で、(泣き止んだ後)さっそく、授業を見せてくれることになりました。

一番下の4歳から12歳くらい?までの子がいる、各教室を見て回ります。イエナプランでは、複数の学年が同じグループ(異年齢でファミリーグループというものを作る)になっており、子ども同士で教えあったりして、協働しながら色々なことを学ぶことを重視しています。

なので、年齢はごちゃごちゃになっており、かつ日本のような一斉授業ではないので、各グループごとに何かの実験をやっていたり、個人学習をしている子もいたり、日本的感覚では幼稚園を見に来ているようです。

また各クラスを縦横無尽に行き来して、色々な子と意見交換したり、プロジェクトワークを手伝ったりしている様子で、休み時間かのような印象も受けます。

先生は、小グループに対して実験を見せていたり、個人ワークをしている子を見守っていたり、とおよそ日本の学校とはイメージが違います。いわゆる日本的な座学で、机をみんなで一斉に並べて勉強する、というイメージは全くありませんでした。

実践型学習で「自分たち(&仲間)で学ぶ」ということを重視していました。

そんな授業を見せながら、校長先生が「生徒に質問してもいいよ」と言います。

そこで、「学校は好きか?」「なぜ好きか?」「嫌いなところは?」といった質問をしてみました。

まず面白かったのは、こちらが英語でした質問に答えられない子(英語が喋れない子)がいると、周りで英語ができる子が助けてくれます。スコットランドとニュージーランドのハーフの子が助けてくれたり、南アフリカから来ている子が助けてくれます。とはいえ質問された当人は、自分でできるだけ英語で答えようとしています。このやり取りに先生は一切介在しません。

多くの子が「学校は楽しい」「友達との協働作業が楽しい」「周りの人といろんなコミュニケーションをするのが楽しい」と答えてくれました。

日本だと(自分の場合)、「友達と遊ぶのが楽しい」と答えたと思うのですが、こちらでは「遊び」と「(授業というか)プロジェクト」には境がないんだろうな、と思いました。

さらに、みんな自分の意見をハッキリ言うし、人が意見を言っている時は、きちんと聞きます。おそらくみんな小学校低学年です。これは自分のときと比べると全く違う気がしました。

他人を尊重しながらも自分の意見をキチンと伝え、みんなで協働している姿に感動しました。施設や校舎や先生ではなく、生徒の質が、その学校の良さを一番端的に表していると改めて思いました。

それを校長先生に伝えたところ、それが分かってくれて嬉しい、と言って、また半泣きに。もちろん、なぜかこちらも半泣きに…。再びの「なんだこの展開…?」状態に。

自分でも何をやっているんだろうと思いながら、清々しく学校を後にしました。あ、でもこの感触は、以前のブログで紹介した「きのくに子どもの村学園」を見学した時に、生徒たちに感動した、あの時と同じ感覚でした。

 

ちなみに、一人の低学年の子どもに質問を受けました。

「あなたは自分の子どもをこの学校に入れようとしているの?」

「そうだね、入れられたら良いと思っているけど、まだオランダ語ができないから、初めはオランダ語を勉強しないとね」と答えると、「あなたの子どもなら、大丈夫だよ。きっとすぐにオランダ語できるようになるよ。僕はそう信じているよ。だって、僕だってドイツから来たけど、すぐオランダ語ができるようになったんだから。だから大丈夫だよ。学校で君の子どもが来るのを待っているよ…!」

「…っえ? あっ、あ〜……ありがとう!…じゃなくて、、、サンキュー!」というのが精一杯の金髪日本人43歳。

オランダ、すげ〜っす。とにかく日本の学校とは全く違う、授業?風景にビックリし感動した次第です。

Francisco Osorio