全く治る気配のない新型コロナ。オランダでは、もうすっかりロックダウンがデフォルト化してきちゃっています。まあ、ロックダウンと言っても、一部通常と違いがあったりもしますが子どもたちの生活は、なんとかかんとか通常通り。

大人の生活は、まあ自粛。同じアパートや、学校の保護者、サッカー関係者などなど周りにも普通に感染者が出てきていまして、コロナはもうすっかり特別ではない感じです。

そんな中ではありますが、今日は長男の学校での授業をちょっとご紹介。

コレは結構、良いなあと思いました。

 

テーマを提供する

この授業、二人組でクラスのみんなにテーマを提供するところから始まります。

そのテーマ、基本的には何でも良いのですが、クラスのみんながそのテーマに対して賛成か反対か、なかなか決めづらいもの。かつ、そのテーマを提供した後、テーマの説明を進めていく過程で、みんなの意見を変えていくことが求められています。ここがポイントです。

多分、実際の例を挙げた方が分かりやすいと思いますので、長男たちの提供したテーマで説明します。

彼らが設定したテーマは、死後の「臓器提供の義務化」です。つまりまず始めに「臓器提供の義務化」に賛成か?反対か?という議題を投げかけるのです。ちなみに、このテーマ設定には妻も関わったようですが、そうやって周りの大人も巻き込むことも、すごい良いことではないか?と思います。そこでの対話から、さらにいろいろな展開があるからです。

皆さんはこの議題に対して、賛成でしょうか?反対でしょうか?ちなみに自分は「(臓器提供には賛成なんだけど)『義務化』には反対」という意見でした。

さて、実はここが長男たちの作戦でもあるのですが、案の定、最初はクラスのほとんどの子が「反対」だったそうです。まあ、これは自分と同じような意見だったらしく「臓器提供には賛成だけど、義務化は反対」「そもそも臓器提供自体に反対」「誰に使われるか分からない」「自分か家族が臓器提供するかどうか選びたい」「自分の体から取り出されるのが嫌」などなど、子どもらしい意見も含めて、とにかく「反対」が大多数だったそうです。

ここからが、この授業の面白いところなんですが、今度は長男たち議題提供者が、みんなの意見を変えていくためのプレゼンをする番になります。

ということで、事前に臓器提供周りのリサーチをして意見を変えさせるためのストーリーを作っていくのです。

詳細は聞いていませんが、どうやら「臓器提供されれば助かった命が年間に〇〇人いる」「臓器提供されずに命を落とす子どもたちが〇〇人いる」「実際の臓器提供は任意性だと〇〇%しか実行されない」「国はこれから義務化しようとしている」「臓器提供のためだけに人身売買が行われている」「国連は、臓器提供のための人身売買されている子どもが世界に〇〇人いると発表している」「こうした子どもも、臓器提供が義務として行われることで、結果的に助けることができる」などなど、反対派を賛成派にするための、説得工作をしていくのです。

もちろん、このために彼らは事前にいろいろな事実をリサーチします。また、プレゼンの組み立てをいろいろと考えます。このようにして、結果的にはほぼ全員を「賛成派」にしたようです。(自分も、これを聞いて「賛成派」になりましたw)

このように「意見を変えさせる」ことができると、この授業では評価されるようです。ということで、長男のチームは結構良い評価をもらえたようです。こういう授業、なかなか良いと思いませんか?

 

オランダ人は子どもの頃からこういうことをやっている

今の日本の小学校で、こういう授業があるのかどうか?分かりませんが、少なくとも自分が小学校の時にはなかったので、かなり感心しました。

これを小学校からやっているとすると、大人になった時にそりゃー、プレゼンも上手くなるだろうし、相手との議論も上手くなるだろうし、いろいろなことを知っているようにもなるだろう、と思うのです。

そういえば、最近うちの長男は「日本の子って、あんまりものを知らないね」と言っていました。「トランプかバイデンどっちが良いと思う?って友達に聞いたら、『トランプって…聞いたことあるけど…ビルの名前…?』って言われちゃったよ」「なかなか共通の話題が作れなくて、大変なんだよね」とか言ってましたw

まあ、「日本の子ども」と一括りにするのはどうかと思いますが、確かに、こちらの子どもは小さい頃からいろいろなことに触れていきます。(学校のテスト自体が、こういうことを求めるものもある)

オランダの学校ではプレゼンスキルだけではなく、一般常識、教養というものを大事にしています。

現アジア立命館太平洋大学の学長出口さんの書籍にも、確かご本人の英国駐在時の経験で「日本人駐在員は、あまりにも一般常識や教養がなくて、会食してもビジネスの話しかできないので、ヨーロッパの人と交流ができない」ってことが書かれていました。

とまあ、今回は具体的な授業内容をご紹介しました。

もちろん、彼らはチームで発表用の資料をいろいろと準備などもしていたようです。まあ、なんか、ほとんど大人のプロジェクトみたいなもんですね。

でも、意外と計算できなかったりする子も多いんですよね。まあ、そういう子は計算機があるので全く問題ないんでしょうけど。Googleがあるので、問題なくできることは、Googleに任せる、というのがオランダの教育だったりもします。

ま、昔からの、「ザ・合理的」ってことでしょうねえw